研究課題/領域番号 |
15K15237
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
及川 伸二 三重大学, 医学系研究科, 准教授 (10277006)
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研究分担者 |
矢田 健一郎 三重大学, 医学系研究科, 産学官連携研究員 (40467361)
福原 潔 昭和大学, 薬学部, 教授 (70189968)
冨本 秀和 三重大学, 医学系研究科, 教授 (80324648)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | アルツハイマー病 / 高齢化 / バイオマーカー / エクソソーム / 活性酸素 |
研究実績の概要 |
アルツハイマー病は、日本における認知症の原因の第一位を占め、増加傾向にあることから大きな社会問題になっている。現在、日本では極めて急激に高齢化が進み、2060年には老年人口が40%に迫る勢いで上昇を続けている。アルツハイマー病の罹患は、高齢者に多く認められることから今後アルツハイマー病の増加が危惧されている。アルツハイマー病は、記憶や認知機能および思考能力を不可逆的に障害する進行性の脳変性疾患のため、患者の生活の質(QOL)が徐々に悪化していく。その根治的治療法は未だ確立されておらず、進行を抑制するためには早期発見による予防的治療が必要である。本年度では、新規バイオマーカーの探索として、過去に確立したエクソソームの単離法を用い、エクソソーム中のタンパク質の変動を解析した。その結果、健常者と比較してアルツハイマー病患者の血漿エクソソーム中で5個のタンパク質スポットが1.5倍以上有意に増加し、3個のタンパク質スポットが1.5倍以上有意に減少していることが明らかになった。これらのタンパク質の変動は有効なバイオマーカーになる可能性があるため、現在タンパク質の同定を行っている。また、アミロイドβ凝集抑制作用が報告されている抗酸化剤モリンを基盤としたPET試薬を開発するため、モリンの安全性の検討を行った。その結果、モリンは銅イオンの存在下において活性酸素を生成し生体高分子に障害を与えることが明らかになった。モリンのB環2’位のOH基がアミロイドβの凝集阻害に関与していることが報告されていることと我々の結果から、モリンのB環4’位のOH基を修飾することによりモリンの生態毒性作用を軽減できる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
エクソソームに含まれるタンパク質は、それらを分泌する細胞の種類や生理条件を反映するため、各種疾病に特有なバイオマーカーの探索に非常に有用である。我々は、少量の血液からエクソソームを分離し、タンパク質を抽出する方法を確立している。本年度は、アルツハイマー病罹患と健常者から血漿エクソソームを分離し、タンパク質精製後に蛍光標識二次元ディファレンスゲル電気泳動解析システム(2D-DIGE)を用いてタンパク質の変動解析を行った。また、アイソトープで標識したヒトがん関連遺伝子の単離DNA (32P-DNA) を用いて モリンによるDNA損傷性とその塩基配列特異性について検討を行い、モリンの安全性を評価した。しかし、アルツハイマー病モデルマウスにおけるPET/MRI画像解析においては、動物用高感度・高分解能PET/MRI装置が故障し、修理が長期に及んでいることからマウスの頭部画像の取得が行えなかった。
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今後の研究の推進方策 |
動物用高感度・高分解能PET/MRI装置の修理が完了次第、マウスの頭部画像の取得を行っていく。さらに、アルツハイマー病の早期診断バイオマーカーの探索研究も続けていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度にアルツハイマー病モデルマウスにおけるPET/MRI画像解析が行えなかったので、その費用分等を次年度に繰り越した。動物用高感度・高分解能PET/MRI装置の修理が完了後、繰り越した費用をマウスのPET/MRI画像解析や成果発表に使用する。
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