研究実績の概要 |
C3Hマウスは高齢期の雄が一定の割合で肝腫瘍を自然発症する系統である。C3Hマウス雌(F0)の妊娠期に無機ヒ素を投与すると、F1雄を介してF2雄で肝腫瘍が増加することが明らかになっている。その原因にF1精子のDNAメチル化変化が関与すると仮定し、妊娠期ヒ素曝露によるF1精子のDNAメチル化変化をReduced representation bisulfite sequencing (RRBS)法によって解析した。 今年度は対照群およびヒ素群F1精子のRRBSライブラリーの次世代シークエンスを終了し、リファレンス配列に対してマッピングを行った。そのデータから、ヒ素群精子でDNAメチル化が増加または低下したシトシン(hyper-DMC/hypo-DMC)および領域(hyper-DMR/hypo-DMR)の検出を、methylkitおよびedmrを用いて行った。遺伝子発現の制御に重要な転写開始点±2000 bpのDMR (promoter-DMR)の検出はbed tools closestを用いて行った。 その結果、C3Hマウス精子のゲノムワイドなDNAメチル化状態と、ヒ素群F1精子のDMC, DMRおよびpromoter-DMRを明らかにし、ヒ素群F1精子ではhypo-DMCが増加していることを見いだした。またヒ素群F2肝腫瘍で対照群肝腫瘍に対してメチル化の程度が異なるpromoter-DMRと、F1精子のpromoter-DMRに共通する領域を見い出した。 以上の結果は、妊娠期ヒ素曝露がF1精子のDNAメチル化変化を介してF2に影響を及ぼす可能性をさらに検討する重要な手掛かりを示した。 連携研究者:中林一彦(国立成育医療研究センター)、岡村和幸、鈴木武博、宇田川理(国立環境研)、研究協力者:松下隼也(東京理科大)
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