研究課題
最近の研究では認知機能と手指巧緻性に関連があることが報告されているが、その背景にある脳活動の変化については明らかではない。本研究では地域在住高齢者の手指巧緻性と脳糖代謝との関連を明らかにすることを目的とした。地域在住高齢女性104名(平均年齢 ± 標準偏差:75.1 ± 5.1)に対して、18F-FDGによるPositron Emission Tomography(FDG-PET: 18F-FDGはブドウ糖の類似化合物であり、血中に投与したFDGの脳内分布は局所の脳糖代謝を反映し、FDG集積の分布は局所脳活動と極めて高く相関する)画像を撮影した。FDG-PET画像は運動制御・認知機能に関与すると考えられている15の脳部位に関心領域を設定して計測した。脳の糖代謝は解剖学的な違い(脳の総容量や身体サイズ)に強く影響を受けるため、加齢変化が小さく、アルツハイマー型認知症患者でも比較的代謝が保たれる小脳の糖代謝量を用いて、各ROIの値を標準化し、解析値とした。PET撮影前後6ヶ月以内に手指巧緻性検査であるpegboard test(30秒間に穴に挿入できたピンの数を測定)および認知機能検査としてMMSE、TMT(A, B課題)を行い、実行機能を強く反映するとされるΔ-TMT(A, B課題の差分値)を算出した。性、年齢、教育年数、既往歴を調整した重回帰分析の結果、Δ-TMTとpegboard test成績の有意な関連が認められた。またpegboard test 成績は、アルツハイマー病患者で早期に糖代謝の低下が認められる部位である(すなわち認知機能と密接に関連する部位)楔前部や後部帯状回の糖代謝量と有意に関連した。しかし、2つの脳部位の糖代謝量とΔ-TMTとの間には有意な関連性は認められなかった。本研究の結果から、手指機能が認知機能低下を早期に反映する可能性が示唆された。
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