本研究は,既存の病院関連統計を活用し,病院経営戦略が財務的・臨床的アウトカムに与える影響を評価することを目的に実施した.そのために本研究では,公表されているもののデータベース化されていない情報をデータベース化とアーカイブ化を進め,当該データベースを用いた実証研究を行ってきた. (1)病院関連統計のデータベース化・アーカイブ化 2014年度から『病床機能報告制度』が導入され,病床を有する全ての医療機関は自らの病床機能を公開することとなった.2014年度および2015年度は都道府県別において公開され,2016年度以降は厚生労働省において公開されている.本研究では,各データに病院IDを付与し,年度間のデータ突合可能なデータベースを構築し,アーカイブ化を行った.また,自治体病院,国立病院機構および地域医療機能推進機構においては財務指標が公開されていることから,そのデータベース化を行った.また,2016年度からは『病院情報の公表制度』が導入され,DPC病院において各施設のウェブサイトにおいて臨床情報を公開することとなったため,そのデータベース化を行った.アーカイブ化したデータは研究室ウェブサイトにおいて一般公開することで,計量医療経営学の発展に寄与する成果をあげてきた. (2)病院統計データベースを用いた実証研究 上述のデータベースを用いて,公立病院再編による経営改善効果(大谷2019),入院診療収益の関連指標の解明(荒川2018),がんのStage分類の不明率の検証(一番ケ瀬2018),病院形成戦略が財務指標に及ぼす影響評価(福田2018)を行ってきた.これら研究は,医療機関・年度においてパネルデータ化することで,従来の医療経営学領域では十分に検証されてこなかった定量的なエビデンスの解明に資する成果を産出してきた.
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