平成29年11月の日本経営工学会秋季大会(横浜市)にて「彎曲丸針の直線的刺入による医原性損傷の軽減に関する研究」と題して、口頭発表した。本発表は丸針による直線的刺入動作における医原性損傷を軽減するために、医原性損傷部位の面積を算出する理論式を構築し、医原性損傷面積を軽減する動作を考案した。学会会場のフロアからは意見として、損傷評価について、本来、損傷量は体積であるが面積に置き換える根拠や、針の剛性と組織の弾性に関する検討の必要性などが指摘された。現在までの学会発表により、臨床に近い状況で実験する必要性と、外科医による動作精度の再現が課題であることが指摘された。臨床に近づけるためには、内視鏡下手術への対応や引抜き動作の解析が必要であり、動作精度の再現については、有効数字3桁の理想的な動作内容を外科医が再現できるかどうかについて検討する必要がある。これらの所見から最終年度には運針術習得システムの基本構成となる、内視鏡下手術のための運針動作計測システムを開発した。本システムは、内視鏡用手術道具、トレーニングボックス、6軸力覚センサーや3台のCCDカメラで構成した。手術道具を非接触で3次元位置計測する画像処理システムと、被運針組織に加わる負荷を測定する力解析システムを組み合わせ、運針術習得システムの開発を試みた。手術道具を3次元で位置計測するシステムではテンプレートマッチング手法を活用したシステムを提案できた。力解析システムにおいては、運針動作を刺入動作・運針動作・針離し動作などに分類し、運針対象物にかかる負担を推定することができた。 今後の課題は3次元位置計測システムを完成させ、医療従事者によるデータ収集を行い、熟練者の助言情報を整理し、力解析システムと手術道具位置情報に基づき、定量的な動作指標による動作助言ができる運針術習得システムを構築したいと考える。
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