研究課題/領域番号 |
15K15259
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研究機関 | 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
藤井 千代 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所 地域・司法精神医療研究部, 部長 (00513178)
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研究分担者 |
岡田 幸之 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, その他, その他 (40282769)
安藤 久美子 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 准教授 (40510384)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 精神科事前指示 / 自己決定権 / 臨床倫理 / 非自発的入院 |
研究実績の概要 |
患者の同意判断能力が欠如している場合でも自律性を尊重した精神科医療を実践するための方法として「精神科事前指示(Psychiatric Advance Directives;以下PADs)」が知られている。今回、我々はPADsの実臨床での使用を開始し、患者からの意見をもとに本邦でのPADsの普及可能性を検討した。 【対象および方法】平成27年1月から平成28年12月までに、研究協力病院に非自発的入院をした患者95名(男性43名、女性52名)を対象とした。未成年者、MMSE21点以下の者、IQ60以下の者、人格障害の患者は除外した。十分な説明ののち、同意が得られた者に対し主に精神保健福祉士の援助のもと退院前にPADsを作成した。 対象者の診断はF2群48名、F3群39名、その他8名であった。95名中59名(62.1%)が作成に同意し。作成した患者のうち39名(66.1%)はPADsが権利擁護や医療サービスの向上に寄与しうると答えた。一方で望まなかった理由では「個人的なことを知られたくないから」「病院に自分の考えていることを残したくないから」と情報の保全を理由としたものと、「事前指示制度の理解が難しいから」と難しさを理由としたものがそれぞれ10名(27.8%)で最多であった。 PADsを作成した人は、概ね、今後の医療における権利擁護や医療サービスの向上に寄与しうるものとして肯定的に捉えていた。先行研究では援助付PADsを完成させた人は61%であり、本邦においてもPADsを普及させることができる可能性が示唆された。一方で治療を受けている医療機関の職員に自分の希望を知られることに抵抗を示す人も多くみられ、援助者の選択を含め本人のニーズに沿った作成方法を選択できる工夫が必要だと考えられた。
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