研究課題/領域番号 |
15K15267
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
福土 審 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80199249)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 脳腸相関 / 過敏性腸症候群 / 遺伝子 / ストレス / 炎症 / 消化管運動 / 消化管知覚 / 神経伝達物質 |
研究実績の概要 |
ストレス関連疾患の克服は現代社会における非常に大きな課題である。過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome; IBS)はその最も好適な疾患である。研究代表者は、特定の遺伝子型が環境の変化に特に反応する遺伝子-環境相関の機序がIBSの鍵であるというモデルを提唱し、注目されて来た。本研究ではIBSの関連遺伝子が環境刺激の影響を受け、蛋白・代謝産物を介してIBSを発症することを証明することを目標にする。得られた結果は、ストレス関連疾患全般に拡張することが可能であり、科学的・社会的意義がきわめて大きい。CRH、CRH-BPの遺伝子を対象とし、HPA軸関連遺伝子のSNPやそのハプロタイプがIBSと健常者とで異なる、選択したSNPがIBSのサブタイプ (便秘型・下痢型・混合型)や心理的異常に影響する、という仮説を検証した。IBS群111名、健常対照群142名を対象とした。先行研究を参考にし、CRH遺伝子2つ、CRH-BP遺伝子1つのSNPを選択した。対象者の心理状態は、抑うつ (SDS)・自覚ストレス (PSS)・状態‐特性不安尺度 (STAI)で定量化した。対象者から採血した血液を用いてジェノタイピングを行った。選択したSNPのジェノタイプ頻度とIBSとの直接の関連は見られなかった。しかし、CRH-BP遺伝子多型 rs10474485のマイナーアレル(Aアレル)保有により、IBS群のPSS得点が有意に低下した。特にAアレル保有群では、下痢型IBSにおけるPSSや特性不安得点、混合型IBSにおけるSDS得点が高かった。また、女性IBS群のSDSやPSS得点が有意に低値であった。以上より、rs10474485多型によるストレスや不安への保護的作用が示唆される。HPA軸関連遺伝子多型はIBS関連の心理状態に影響することが分かり、仮説が支持された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、IBSの関連遺伝子が環境刺激の影響を受け、蛋白・代謝産物を介してIBSを発症することを証明することを目標にしている。まず、CRH、CRH-BPの遺伝子を対象とし、HPA軸関連遺伝子のSNPやそのハプロタイプがIBSと健常者とで異なる、選択したSNPがIBSのサブタイプ (便秘型・下痢型・混合型)や心理的異常に影響する、という仮説を検証し、その結果、仮説が支持された。得られた結果は、ストレス関連疾患全般に拡張することが可能であり、科学的・社会的意義が大きい。以上、申請書に記載した速度で分析が進みつつある。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、IBSの関連遺伝子が環境刺激の影響を受け、蛋白・代謝産物を介してIBSを発症することを証明しようとしている。まず、CRH、CRH-BPの遺伝子を対象とし、HPA軸関連遺伝子のSNPやそのハプロタイプがIBSと健常者とで異なる、選択したSNPがIBSのサブタイプ (便秘型・下痢型・混合型)や心理的異常に影響する、という仮説を検証し、それを支持する結果を得た。得られた結果は、ストレス関連疾患全般に拡張することが可能であり、科学的・社会的意義が大きい。今後、当初の計画通り研究を進展させる予定である。
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