研究課題
本研究の目標はアンジオテンシンIIを分解し、アンジオテンシン1-7(A1-7)を産生するACE2の加齢性筋機能低下(サルコペニア)における役割を明らかに、A1-7を標的とした治療法の開発につなげることにある。初年度の段階で見出した結果は以下の通りであった。①ACE2欠損マウスで野生型マウスに比し6ヵ月齢以降に握力の低下を認め二年齢のACE2欠損マウスと野生型マウスへのA1-7投与により握力の改善を認め、その効果はACE2欠損マウスでより顕著であった。②ACE2欠損やA1-7投与により骨格筋重量や骨格筋容積に変化を認めず、耐糖能にも変化を認めなかった。これらの結果を受け、昨年度には以下の研究成果を得た。①15ヵ月齢のマウスにおいて前脛骨筋の神経刺激による張力測定ではACE2欠損マウスと野生型マウスで張力に差を認めなかったが、連続刺激時の筋疲労はACE2欠損マウスで有意に増加していた。②これらのマウスの前脛骨筋を用いてmRNAアレイ解析を行ったところ、骨格筋機能に影響しうる10数種類のmRNA発現に差を認め、特に老化マーカーであるp16の発現がACE2欠損マウスで顕著に増加していた。③2ヵ月齢マウスの組織検討でp16の発現はACE2欠損マウスにおいて有意に増加していたが、A1-7による変化は認めなかった。④A1-7の受容体とされるMas欠損マウスの長期飼育の結果では経時的な握力の変化において野生型マウスとMas欠損マウス間で大きな差を認めなかったが、Mas欠損マウスに対するA1-7の握力改善作用は明らかではなく、A1-7の効果は当初の予測に反しMas依存性を有することが示唆された。このような結果から、ACE2欠損は不可逆的な骨格筋の老化を促進するが、A1-7は少なくとも一部はMas依存性に筋機能を改善するという結果が得られた。
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Scientific reports
巻: 7 ページ: 42323
10.1038/srep42323