研究実績の概要 |
慢性偽性腸閉塞症(CIPO)は器質的原因がないが慢性的な腸閉塞症状を呈し、時に致死的となる重篤な疾患である.持続的な小腸内圧上昇のために栄養吸収能が低下し、bacterial translocationにより菌血症を生じるため、栄養療法と腸管減圧が重要である。特に菌血症に従来のイレウス管は患者苦痛が大きく入院管理を余儀なくされるものであり,長期留置できるものではない.本研究では,症状緩和及び小腸機能廃絶防止・菌血症予防の観点から,特に患者負担の少ない腸管減圧法として経皮内視鏡的胃空腸瘻造設術(PEG-J)の有用性・安全性についての検討を行った. 症例の各パラメータ平均値は,PEG-J前:腹部症状を有する日数 24.3日,BMI 14.9kg/m2,血清Alb値2.6g/dlであったが,PEG-J後:腹部症状を有する日数 9.3日,BMI 17.2kg/m2,血清Alb値 3.8g/dまで改善した。一方で小腸容積は4.05L vs 2.59Lで有意差が得られなかった。1症例で難治性の逆流性食道炎,鉄欠乏性貧血,1症例でPEG-J瘻孔周囲の化学性皮膚炎を来したが,いずれの症例も保存的治療で改善傾向であった。 従来の減圧方法と比べてPEG-J減圧療法は患者苦痛が少なく,自宅でも管理可能な治療法である.今回の検討は数例のpilot studyであるが,PEG-J減圧療法はCIPOの腹部自覚症状の改善と栄養状態の改善に大いに貢献しうることが示された.一方で,チューブが幽門輪を塞ぐことによる酸逆流症状に注意が必要と考えられた.単施設研究であること,稀少疾患のため症例数が少ないことがlimitationである。新たな治療法として確立するために今後更なる症例の集積と,長期的な観察・評価が必要である.希少疾患であるため症例数は少ないが研究の進捗は順調である
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