研究課題/領域番号 |
15K15280
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
安武 正弘 日本医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70281433)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 睡眠診断 / 清浄環境 |
研究実績の概要 |
【背景】新しい清浄環境技術であるClean Unit System Platform (CUSP)はテント状の閉鎖空間へも展開可能で,数分以内にUS 209D クラス100 (0.5m以上の総粒子数が1立方フィート[cf]当り100 個以下で、病院における無塵室相当)を達成できる。この技術を睡眠中に適応すると,単にクリーンな睡眠環境を提供するだけでなく,体動による僅かな塵埃微粒子の変動を生体情報として捉えることができる。我々は,これをkinetosomnogram(KSG)とし,睡眠情報検知への応用を検討した。 【方法】被験者(発表者)をテント状CUSPの中で臥位にし,清浄環境下で左右寝返り運動や上肢・下肢屈伸を5分ごとに繰り返し,塵埃微粒子の変動を調べた。次に,被験者に睡眠ポリグラフ(PSG)装置を装着してテント状CUSP内で就寝させ,PSGのパラメータとKSGとを対比した。また,KSGの周期性をMemCalc時系列データ解析プログラムで評価した。 【結果】テント内粉塵微粒子密度はCUSP始動により約5分で5~15万/cfから0~300/cfまで浄化され,寝返りで3000~6000/cf,上肢・下肢の屈伸で1000~2000/cfの一過性ピークを示した。脳波上の覚醒(反応:W)とKSGのピークは90%以上で一致した。スペクトル解析では80~100分のレム睡眠周期近傍に有意なパワースペクトルピークを認めた。 【考察】テント状CUSPにより得られるKSGを用いた睡眠時塵埃数分析は,非侵襲・非接触に睡眠中の覚醒反応の検知を可能にし,睡眠状態に関するレム睡眠周期などの情報を検知・評価するのに有用であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
・テント型CUSPのプロトタイプの作成にあたり,北海道大学電子科学研究所,石橋晃教授の技術的指導が必要であり,物品の調達やシステムの作成に時間を要した。実際,睡眠障害を有する患者に適応するまえに,健常人におけるKSGとPSGの関係を明らかにすることが重要であり,PSG以外の睡眠診断装置との対比の必要性も生じた。よって,CUSPによるKSGとそれ以外の非侵襲的な睡眠診断法との対比を行うことにした。
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今後の研究の推進方策 |
・CUSPを睡眠中に適応することにより得られるKSGは,非接触・非侵襲に睡眠中の体動に関連した生体情報を得られるが,すでに応用されている他の非侵襲的な睡眠計(モダリティ)との比較が必要である。加速度計を利用する方法(Fitbit charge HR:FB405),睡眠シートの圧センサーを利用する方法(タニタスリープスキャン:SL-504),磁場の変化を利用する方法(オムロンスリープデザイン:HSL101)などがある。28年度の前半で,健常ボランティアを対象に3つの既存の“睡眠計”とKSGを比較検討する。 ・28年度後半は,入院ベッドに適応できるCUSP装置を作成し,健常ボランティアを対象にその清浄能力,KSGの診断能に関する検証を行う。 ・高齢者の睡眠障害を有する患者へのKSGの応用を検討するため,研究プロトコールを倫理委員会にかけ,今年度終わり頃からのスタートを予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
・初年度にデータ収集・改正用のPC購入に40万円を計上していたが,研究立ち上げにおいて既存のPCを用いて対応した。研究が進むにつれ,処理速度やメモリーに問題があるため,28年度に新規購入することにした。 ・一台35万円で計上していた,粉塵計を予定より安く購入することができた。 ・研究が予定より遅れたため,予定の学会発表ができず,旅費関係の支出が少なくなった。
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次年度使用額の使用計画 |
・PCの購入費用ならびに,国内学会1回(2016年6月),国際学会1回(2016年9月)の発表にかかる旅費等に使用予定である。 ・その他の必要物品・消耗品,論文作成等に関する費用に使用予定である。
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