研究課題
炎症性腸疾患は遺伝要因と腸内細菌などの環境要因から発症すると考えられ、それぞれの要因に関する検討が繰り返し行われている。しかし、それぞれの要因だけでは発症に至らず、腸内細菌と、遺伝的な免疫系の違いとの間での相互作用が強くかかわっていると予想される。しかし、実際にその相互作用を確認するために、ヒトの腸内細菌叢を変化させることも遺伝背景を変化させることも困難である。また相互作用をin vitroの実験系で再現することもできない。そこで、in vivoでこの相互作用を再現できないか、研究を開始した。本研究では、遺伝的背景と腸内細菌叢との関連を見るため、それぞれを疾患に代表的な環境を用意する必要がある。遺伝的背景については、日本人用アレイを用いた検討により4つのクローン病感受性遺伝子領域、2つの潰瘍性大腸炎感受性遺伝子領域が有意な相関を示していた。しかし、腸内細菌叢に関与するパネート細胞の異常にかかわる遺伝的背景を検討したところ、疾患感受性とは異なる遺伝子の多型が、日本人においては関係していることが判明した。腸内細菌叢については、疾患特異的な変化をみるため、潰瘍性大腸炎患者16名について、同一患者内での腸管内の細菌叢を盲腸およびS状結腸の2か所において採取し、16sRNA遺伝子のV3-V4領域を増幅、次世代シーケンサーでの解析を行った。この結果、同一患者においても、炎症部位と非炎症部位では細菌叢の多様性が有意に変化していることが判明した。これらのことから、遺伝的背景も腸内細菌叢のいずれにおいても、疾患を代表する組み合わせを選択するには多種多様なパターンを作成する必要性があると考えられた。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
JCI Insight
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
10.1172/jci.insight.91917