研究課題
ヒト腸上皮オルガノイドを用いた消化管由来ホルモンに関する解析を引き続き実施した結果、以下のような成果を得た。1) ヒト小腸上皮由来オルガノイドに対しVIP(血管作動性腸管ペプチド)を添加することにより、急速な膨張(swelling)が誘導され、これはオルガノイド内腔への急速なClイオンと水の移動によるものと考えられた。2) VIPによるオルガノイドの急速膨張はヒト大腸上皮由来オルガノイドでも誘導された。3) 同様の作用はセロトニンでは誘導されなかった。4) 新たに構築した解析系を用いることにより、オルガノイドの膨張を指標としたVIPの作用について用量反応曲線を描くことが可能となり、これに基づきlogEC50を算出することが可能であった(ヒト小腸オルガノイド=-8.36、ヒト大腸オルガノイド=-8.53)。5) オルガノイドの急速膨張を誘導し得る他の生理活性物質等と比較した結果、ヒト小腸及び大腸オルガノイドにおいて、VIPはPGE2と同等の最大膨張値を誘導し得る活性を有することが明らかとなった。6) このような強力な水分泌促進機能を有するVIPは、正常腸管粘膜由来小腸・大腸オルガノイドのみならず、潰瘍性大腸炎患者由来の大腸オルガノイド、およびクローン病患者由来の小腸オルガノイドにおいても同様の活性を発揮し得ることが示された。以上のような結果から、生体内においてVIPはPGE2と同様に直接小腸及び大腸上皮細胞に作用することにより、強力にClイオンの分泌と水分泌を促進する活性を発揮し得ることが明らかとなった。本解析に用いたオルガノイド急速膨張の測定系を用いることにより、消化管ホルモン等による生体内体液調節機能を迅速・定量的に評価することが可能となった。
すべて 2016
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Sci Rep
巻: 6 ページ: 36795-36795
10.1038/srep36795