研究課題/領域番号 |
15K15296
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
久松 理一 杏林大学, 医学部, 教授 (60255437)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | マクロファージ / 分化 / エネルギー代謝 / IL-10 |
研究実績の概要 |
炎症性腸疾患を含めた多くの免疫疾患や自己炎症性疾患では免疫担当細胞の制御以上が関与している。マクロファージは自然免疫系細胞に属し、異物の除去と炎症惹起のみでなく抗原認識や組織修復あるいは免疫恒常性の維持といった多彩な機能を有する。その機能からM1(炎症惹起型)とM2(炎症制御型)に分類される。正常な腸管マクロファージはM2型と考えられておりIL-10などの制御性サイトカインを産生し過剰な免疫応答を防いでいる。これは腸内細菌叢と共存する上で極めて合理的である。一方、クローン病の腸管マクロファージは腸内細菌刺激に対して過剰に炎症性サイトカインを産生することが我々の研究室を含めて多くのグループが報告している。すなわちM2型の機能喪失が病態に関与している。近年、M1とM2それぞれのタイプで利用する細胞内エネルギー代謝経路に違いがあることが明らかになりつつある。しかし、単球からの機能的分化の過程でどのように細胞内エネルギー代謝が関与しているかは明らかでなかった。我々はこの点に注目し、単球から各タイプのマクロファージに分化する際の細胞内エネルギー代謝の影響について検討した。その結果、M-CSF刺激によるIL-10を産生するM2型マクロファージへの分化誘導において解糖系を阻害することによりむしろTNF高産生型のマクロファージが誘導された。 この現象は解糖系の利用を再び可能とすることでキャンセルされた。マクロファージの機能的分化誘導において細胞内エネルギー代謝の影響が初めてあきらかとなった。この結果は米国免疫学会で報告され、Immunology Letters 誌(Immunol Lett. 2016 Aug;176:18-27.)に掲載された。 さらに、成熟したマクロファージに対するLPS刺激においては解糖系はむしろIL-6産生に影響していることが判明した。この結果はImmunology Letters 誌(Immunology Letters 2017 Mar;183:17-23.)に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
単球からIL-10産生性のM2型マクロファージへの分化誘導の際に解糖系利用の阻害をすることでTNF高産生型のマクロファージが誘導された。この結果は米国免疫学会で報告され、Immunology Letters 誌(Immunol Lett. 2016 Aug;176:18-27.)に掲載された。さらに、成熟したマクロファージに対するLPS刺激においては解糖系はIL-6産生に影響していることが判明した。この結果はImmunology Letters 誌(Immunology Letters 2017 Mar;183:17-23.)に掲載された。
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今後の研究の推進方策 |
今後は細胞内エネルギー代謝がマクロファージの分化や機能制御に影響するメカニズムを分子レベル、特に細胞内シグナルの点から追究するつもりである。また、解糖系阻害剤を投与したマウスにおいて腸炎感受性が上がるかどうかもin vivoの実験として検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品が当初予定していたよりも安価に購入でき、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度はシグナル解析のためCHIPなどを行うことが多くなると予想され、キットなどの購入費がかかることが予想される。
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