研究課題
マクロファージはサイトカイン産生、貪食処理、組織修復など多様な機能を有している。近年、その機能によりいくつかのタイプに分類されることが提唱されており、炎症性サイトカインを産生するM1型、IL-10を産生し恒常性維持や組織修復に働くM2型に大きく分類される。M1型とM2型では細胞内エネルギー代謝も大きく異なっており、従来M1型では好気的解糖系が主に利用され、M2型では酸化的リン酸化が主として利用されるとされていた。我々は単球からM2型マクロファージにin vitroで分化誘導する際に解糖系を阻害することで誘導されたマクロファージの機能が変化しIL-10の産生が低下しIL-6の産生が亢進するということを明らかにした。この作用は分化過程での解糖系阻害を解除することでキャンセルされることからM2型マクロファージのIL-10産生能獲得には分化過程における解糖系が重要であると考えられた。さらに分化したM2型マクロファージをLPS刺激した際のIL-10とIL-6産生において、解糖系阻害はIL-6産生を減少させた。 一方、脂肪酸酸化阻害剤はIL-10産生を抑制したが、IL-6産生を抑制しなかった。解糖系阻害剤はERKリン酸化を抑制したが脂肪酸酸化阻害剤にはこの作用は認めなかった。NF-κBおよびp38およびJNKはこれらの代謝阻害剤の影響を受けなかった。 これらの結果は、M2型マクロファージにおけるLPS刺激下でのサイトカイン産生において従来言われていた酸化的リン酸化経路に加えて解糖系-ERKの経路を使用することを示している。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Immunology Letters
巻: Mar;183 ページ: 17-23
doi: 10.1016/j.imlet.2017.01.012.