研究課題
創薬においては肝臓における薬物代謝を評価することが必須であり、その際には部位特異的な肝細胞機能の差異(zonation)を考慮することが重要である。肝小葉内における部位特異的な機能発現には、肝細胞の酸素消費によって形成される酸素濃度勾配が重要であると報告されている。そこで本研究では、肝小葉特有の酸素濃度勾配を生体外で再現するデバイスの開発を目的とした。研究初年度となる昨年は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)を用いて酸素濃度勾配を形成可能なデバイスを設計し、予想される酸素濃度勾配をシミュレーションにより確認した。また、実際の酸素濃度勾配の形成には脱酸素剤の亜硫酸塩を培養液中に添加し層流現象による拡散を利用する方法を用いて、生体内近似的な酸素濃度における肝細胞の生存を評価したところ、亜硫酸塩による肝細胞傷害が問題となった。これらの結果を踏まえて、今年度はデバイス下層に空気を送達して細胞播種底面に用いたPDMSを介して酸素供給を行う新たな方法の有用性を検討した。酸素応答性色素のポルフィリン膜上にデバイスを設置して酸素濃度勾配の蛍光可視化を行った結果、シミュレーション結果に近似的な酸素濃度勾配の形成が確認された。また、カルセインAM/PI二重染色により評価した肝細胞の生存率は、亜硫酸塩法では約60%であるのに対して、今回の酸素供給法では約80%と良好であり、後者を用いることで飽和播種密度での肝細胞培養が可能となった。以上、PDMSを用いた微小流路と適切な酸素供給を行うことで、従来の培養皿では実現困難であった肝小葉環境を生体外で模倣することに成功した。
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