研究課題/領域番号 |
15K15300
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
平山 剛 東京医科大学, 医学部, 講師 (30449219)
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研究分担者 |
本多 彰 東京医科大学, 医学部, 教授 (10468639)
宮崎 照雄 東京医科大学, 医学部, 講師 (60532687)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 胆汁酸 / ミュリコール酸 |
研究実績の概要 |
ラット・マウスなど齧歯類とヒトの胆汁酸組成は大きく異なっている。顕著な違いは,CDCAが齧歯類では極めて少なく,CDCAから6β-hydroxylaseによって生成されると考えられるミュリコール酸(MCA)が胆汁酸プールの約半分を占めていることである。しかし,CDCAの6β-hydroxylaseについてはいまだ不明な点が多い。本研究では,将来のヒト型胆汁酸マウス作製の可能性も視野に入れ,齧歯類のMCA合成酵素の探索に着手した。 雌雄のラットとマウスの肝,腎,さらにヒト肝のmicrosomesに,基質となるCDCAを添加し,NADPHと共にincubationを行った。反応物から胆汁酸を精製し,LC-MS/MSにてMCAの生成量を定量した。以上の結果とマウス,ラット,ヒトのCYP遺伝子情報,組織発現情報,性差情報を基に,CDCA 6β-hydroxylaseの可能性があるマウスCypの絞り込みを行った。 その結果,齧歯類では,肝ミクロソーム分画に高いCDCA 6β-hydroxylase活性を認めた。また,齧歯類の腎ミクロソームやヒト肝ミクロソーム分画には,CDCA 6β-hydroxylase活性は全く認めなかった。雌雄のCDCA 6β-hydroxylase活性比較では,ラットでは雄のほうが活性が高かったが、マウスでは雌雄の差はなかった。 マウスのCypには102個の遺伝子と88個の偽遺伝子が報告されている。そのうち,ヒトと相同性がなくラットと相同性がある遺伝子は37個,うち文献的に肝臓で有意な発現を認めるものが31個,うち腎臓には有意な発現を認めないとされるものが15個ある。さらに15個のうち遺伝子発現に明らかな性差がないと報告されているものが7個である。現時点ではこれら7個のCypがCDCA 6β-hydroxylaseの有力候補と考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3年計画1年目の目標であった,酵素活性と遺伝子情報による候補遺伝子の絞り込みが,順調に行われ,当初の102遺伝子から7遺伝子にまで絞り込むことができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は,CDCA 6β-hydroxylaseを発現しているマウスの培養肝細胞系を探索し,候補遺伝子7個に対するsiRNAの添加によって,最終的な責任遺伝子を同定する計画である。良い培養肝細胞系が見つからない場合には,マウスの初代培養肝細胞を使用する。
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次年度使用額が生じた理由 |
試薬の納品が年度末になり,請求が平成28年度になってしまうものがあるため。また,培養肝細胞株の選定に時間がかかっているため。
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次年度使用額の使用計画 |
胆汁酸合成能,特にCDCA 6β-hydroxylase活性が保持されていると推測される培養肝細胞株を文献的に調査し,可能性のある株を購入する。最終的に期待通りの株が得られない場合には,初代培養肝細胞を購入する。siRNAにて順番に候補遺伝子のノックダウンを行うが,細胞への高い導入効率を得るために,shRNA レンチウイルス粒子の受託合成を依頼する。遺伝子発現がノックダウンされたことの確認のために,各遺伝子のPCRプライマーのほか,PCR試薬,酵素活性測定試薬,胆汁酸抽出カラム,LC-MS/MSでの分析カラム等の購入が必要である。
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