潰瘍性大腸炎から発生した大腸癌20例を収集し、がんと正常部位からDNAを抽出した。専門病理医によりがん細胞の割合を検討したところ、多くが10-30%と通常の大腸癌より腫瘍の割合が低く、解析の困難さが予測された。 これらDNAからexomeのライブラリーを作成して、exome シークエンス解析を行った。腫瘍のDNAについては、2倍量のシークエンスを行った(Depthx200)。腫瘍の割合が多い2例については、全ゲノムシークエンスを実施した。腫瘍および正常組織のエクソーム/全ゲノムシークエンスのデータより、我々が開発したアルゴリズムを用いて、体細胞変異の同定を行った。この変異検出のアルゴリズムの精度を評価するため、96箇所の変異について通常のSangerシークエンスを行い、候補変異のうち90%について正解であった。
網羅的変異解析の結果、一例につき、7-428個のアミノ酸変化を伴う体細胞変異を検出し、indelは1-391箇所であった。一例、高頻度に変異がおきている症例(947箇所のSNV)があり、MSI陽性大腸癌であると推測された。18例についてTP53遺伝子の変異を、3例についてAPC遺伝子の変異を検出した。これらの遺伝子変異の頻度は、通常の大腸癌と大きく異なっていた。他に、200以上の遺伝子が2例以上について、変異を検出している。これらのうち、TP53やAPCのパスウェイに関わる遺伝子以外にTGFに関わる遺伝子や、潰瘍性大腸炎から発生した大腸癌に特異的に変異が起こっている機能未知の遺伝子も複数確認できている。
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