22例の潰瘍性大腸炎罹患者に発生した大腸癌(CAC:colitis-assocaited cancer)の凍結組織を兵庫医大にて収集し、そのDNAおよびRNAを抽出した。これらより、exome シークエンスおよびRNAシークエンスのNGSライブラリーの作成を行い、網羅的ゲノム解析を施行した。22例のうち複数のサンプルにて、アミノ酸変化を伴う体細胞変異を検出した遺伝子43個について、濃縮パネルを作成し、target シークエンス解析を行った。合計90例のCAC(UCおよびCD)での大腸癌にパラフィンブロックよりスライドを作成し、HEでの評価、腫瘍部分の切り出しを行って、DNAを抽出し、これらDNAよりターゲットシークエンスを行った。その結果、66%の症例でTP53の変異を検出したが、APCの変異は16%の症例しか検出されなかった。APCの変異のあったCACは分化型、限局型型IBD、晩発性IBDの症例に有意に偏っており、真のCACではなく、IBDに併発した散発性の大腸癌であると考えられる。また、4つの新規の遺伝子について、CAC特異的に体細胞変異が観察され、CACの発がん機構に深くかかわっているものと考えられる。この1つの遺伝子は、APCと同様にWntシグナル経路に関わる遺伝子であった。CACは 通常の大腸癌と比べて、APCの変異が少なく、TP53の変異が多いので、TP53変異を介した、いわゆるde novo発がんの機構にて発生してきたものと考えられる。
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