研究実績の概要 |
肥満細胞からの脱顆粒はアレルギー疾患の病態において中心的な役割を担っていることから、高親和性IgE受容体(FcεRI)のシグナル経路は喘息治療の標的として有望である。申請者らは、FcεRIシグナルを抑制する免疫受容体、アラジン-1(Allergin-1)を同定し(Hitomi K, et al, Nat Immunol 2010)、House Dust Mite(HDM)による喘息モデルにおいて、Allergin-1遺伝子欠損マウスは血清IgE抗体価及び気道抵抗が亢進することを見出した。申請者は最近、Allergin-1がイノシトールリン脂質に結合することを発見し、このリポソームがIgE依存性脱顆粒反応および局所アナフィラキシーをAllergin-1依存的に抑制する結果を得た。そこで、本申請課題では、喘息の新規治療法を開発することを目的として喘息モデルにおけるリン脂質リポソームによる治療の可能性を検討した。 平成27年度:House Dust Mite (HDM)による喘息モデルのHDMの投与量および投与スケジュールを検討して、野生型とAllergin-1遺伝子欠損マウスで有意な症状の差があり、かつ、野生型で症状の増悪がみられる実験系を立ち上げた。さらに、リポソームの濃度、内径を検討して、肥満細胞の脱顆粒反応の抑制効果の高いリポソームの作製を検討した。 平成28年度:リポソームをHDMによる喘息モデルに予防的および治療的に投与して治療効果を検討したところ、Allergin-1に結合しないリン脂質、フォスファチジルコリン(PC)リポソームを陰性コントロールとして用いたところ、PCリポソームにより喘息症状が改善し、アラジンリガンドとの有意差が見られなかった。
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