研究課題
間質性肺炎の線維化病変は肺構成細胞-間葉系細胞形質転換(Lung Cells-Mesenchymal Transition; EMT)誘導刺激であるTGFβ活性化状態や遷延化低酸素(persistent hypoxia)状態にあり、これらの刺激に対して本来負の制御を行うPTEN活性が減弱していることを明らかとなっている。我々は非リン酸化C末端含有PTEN(PTEN4A)発現誘導は、蛋白脱リン酸化活性によってTGFβおよび遷延化低酸素誘導EMTおよび異常細胞遊走を制御すること、を報告した。さらに、3) 間質性肺炎の治療戦略を目的としたPTEN4Aのヒトへの臨床応用を具現化するためPTEN4A導入ヒトウイルスベクターを作成して外的導入PTEN4AがTGFβ誘導EMTを抑制することを確認した。これらの知見は、組織微小環境下においても蛋白脱リン酸化活性を保つPTEN4Aを外的投与する治療戦略は組織微小環境の制御を介した新たな治療となりうると考えられた。しかしながら、ウイルスベクターを用いた遺伝子導入システムは、ヒトへの臨床応用を視野に入れた時に克服すべき課題が多く存在する。そのため、新たなデリバリー手法を用いてPTEN4Aを投与する治療戦略の構築が最重要課題であると考えられた。そうした中、間葉系細胞がalternative splicing によって誘導される細胞外分泌PTENを介して周囲の細胞の活性化制御を行う可能性が報告された。細胞外分泌機能と細胞内輸送機能を有する細胞外分泌PTEN特異的部位には様々なリン酸化部位がありさらなる解明は必要であるが、これらの知見は本来細胞内局在にとどまる蛋白を細胞外投与できる可能性を示唆している。
3: やや遅れている
今回報告のあったPTENの細胞外分泌部位が機能することを再検証するために、PTEN細胞外分泌部位(N173)にgreen fluorescence protein (GFP)の融合遺伝子を作成した。N173の遺伝子発現の効率を高めるために、Kozak sequenceとATGの遺伝子変異を加えた。これらを薬剤(Doxycyline)調整型遺伝子発現コンストラクトを有する肺癌細胞株H358ON細胞に遺伝子導入した。培養・細胞条件を調節して細胞上清中に分泌されるN173-GFPを検出することを行なった。細胞死による細胞破壊にともなう細胞内蛋白の偽陽性を除外するために、actinを対象比較とした。Western blotting法によって、目的のN173-GFPはGFPとは区別して発現が確認できたが、細胞上清には検出されなかった。細胞外分泌機能における効率性改善をもたらすコンセンサスシークエンスの遺伝子修飾の報告がなされていたため、N173にたいして、2点の遺伝子修飾を加えて検証を行なった。しかしながら、細胞上清には検出されなかった。
細胞外分泌機能と細胞内輸送機能を有する細胞外分泌PTEN特異的部位の特徴を生かして、細胞外分泌機能ドメインを除して、細胞内輸送機能を保持した細胞外分泌部位をGFPに融合して肺癌細胞株H358ON細胞に遺伝子導入することを計画する。それによって、細胞内発現蛋白を大量に回収して、細胞に投与することにより、細胞内移入の実行性を検証する。それによって、細胞内移入蛋白を大量生産することを展開することにつながり、細胞内輸送機能を保持したPTEN4Aの生産に結びつくことが期待される。
すべて 2015
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