肺の修復や成長に携わる組織幹細胞が肺の各領域に存在することが示唆されている。幹細胞がその性質を維持するためには適切な微小環境(ニッチ)が必要である。組織幹細胞の再生における役割、癌化の制御など研究すべき課題は山積しているが、問題点は、肺組織幹細胞ニッチの研究が他臓器に比べ遅れていることである。本研究では、中枢気道、末梢肺に存在する組織幹細胞のそれぞれの環境ニッチをin vitroで模倣し、可能な限り簡略化し、汎用化のためのプロトコールを提供すること、同時に、組織幹細胞の自己増増殖幅能、分化能の評価系を確立し、標準化することを目的とした。具体的には、以下2点について目的に達した。 1.中枢気道、末梢肺レベルそれぞれの解剖学的部位固有の組織幹細胞の自己増幅能、分化能の評価系を確立し、標準化すること 2.中枢気道、末梢肺レベルそれぞれの解剖学的部位固有の幹細胞に適した組織幹細胞ニッチを作成し、可能な限り簡略化し、汎用化のためのプロトコールを確立すること 特に、末梢肺上皮のコロニー形成に線維芽細胞との共培養が必須であると報告されている。支持細胞としての機能を明らかにし、末梢肺上皮細胞:線維芽細胞比の最適化の検討を行った。線維芽細胞の割合を上げる我々の実験では、コロニー数、コロニーサイズともに、上皮と線維芽細胞の比を1:1(C)にする条件が最適であった。1:5、1:10と線維芽細胞をさらに増やしてもそれ以上のコロニー数増加、サイズ増大は認めず、むしろ細胞数過多によるアポトーシスを誘導した。さらに線維芽細胞から産生される線維芽細胞増殖因子2(FGF2)が重要な役割を果たすことをノックアウトマウスを用いて明らかにした。
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