研究課題/領域番号 |
15K15324
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
大沼 圭 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (10396872)
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研究分担者 |
岩田 哲史 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 非常勤講師 (00396871)
岩尾 憲明 順天堂大学, 医学部, 准教授 (00309139)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 悪性中皮腫 / CD26 / ソマトスタチン / ペリオスチン |
研究実績の概要 |
(1)ソマトスタチン受容体(SSTR4)作動薬L803087とCD26抗体併用による悪性胸膜中皮腫(MPM)細胞の増殖・遊走・浸潤抑制効果を、in vitro及びin vivo実験により実証した。また、CD26とSSTR4によるMPM細胞の増殖・遊走・浸潤メカニズムを、変異削除体利用した分子生物学実験によって、解明した。これにより、MPM細胞の増殖・遊走・浸潤に機能する重要な分子であるCD26とSSTR4の機能的な結合ドメインが明らかとなり、分子標的薬の開発につながる成果を得ることが出来た。 (2)SSTR4とともにCD26と相互作用する分子としてペリオスチンを同定した。ペリオスチンは、接着分子であるインテグリンを介して細胞浸潤機能を促進する細胞外マトリックス分子であるが、MPMにおける機能は不明であった。本研究において、CD26細胞内ドメインの発現レベルが異なる種々のMPM細胞株を用いて、CD26細胞内ドメインと相互作用してペリオスチンの転写を促進するシグナル分子を同定した。これにより、ペリオスチンがMPMの治療標的となる可能性が示された。 (3)CD26分子を基点として、SSTR4、ペリオスチン、インテグリン、さらに、テトラスパニンファミリーのCD9分子が相互作用して、MPM細胞の増殖・遊走・浸潤を制御していることを解明した。 以上の成果により、MPM細胞において、細胞膜上のCD26分子を中心としてインテグリンやペリオスチン、SSTR4を含んだ巨大分子複合体が明らかとなり、これら分子群によるMPM細胞の増殖・遊走・浸潤制御機構が明らかとなり、より有効な治療法が望まれる悪性中皮腫の新規治療開発につながる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画初年度は、当初の予定通りin vitro実験での成果が得られた。これらの成果をもとに、次年度は in vivo実験により、CD26分子を中心とした悪性中皮腫の分子標的薬の実証を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
(1)CD26との結合が確かめられたタンパク質の発現をRNAiで抑制し、CD26分子複合体による細胞増殖、遊走、浸潤の制御を実証する。また、これらタンパク質を恒常的にノックダウンした種々のMPM細胞株(ルシフェラーゼ遺伝子導入済み)を樹立し、マウスに移植してMPMの増殖や浸潤・転移をin vivo実験にて解析する。さらに、これらの細胞株を移植したNOGマウスにCD26抗体、SSTR4作動薬を投与して、治療効果を証明する。以上により、CD26を中心とした分子複合体によるMPM浸潤促進作用の一連のメカニズムを解明し、CD26抗体と併用してMPMの治療効果を増強する併用薬を実証する。
(2)MPMの増殖・遊走・浸潤を抑制する種々のSSTR4作動薬をスクリーニングするため、ソマトスタチン類似化合物ライブラリーを用いて、CD26分子をノックダウン或いはCD26抗体処理した細胞株に添加してin vitroスクリーニング実験を行う。in vitroスクリーニングで同定したSSTR4作動薬をMPM細胞を移植したNOGマウスにCD26抗体とともに投与して腫瘍形成能を解析する。
(3)上記[で同定した分子の発現を臨床検体で免疫染色法により確認する。
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