研究課題
「意義」 近年の高効率血液透析は、α1MGやβ2MGの尿毒素の除去を目指すため、これより小さい有用物質も透析によって漏出する。アミノ酸やアルブミンの流出による栄養障害は指摘されるが、インスリンや水溶性ビタミンの流出とその影響はほとんど検討されてこなかった。後者の喪失は代謝系全体に影響を及ぼし、特に代謝異常をもつ糖尿病患者にとっては重大な負荷となることに着眼した。「方法」我々は独自の研究方法としてNMRメタボロミクスを用いて、透析中の患者血中代謝物の濃度を定量し、動態を観察してきた。「結果と考察」非糖尿病患者は透析中の乳酸、ピルビン酸、アラニンは増加し、除去を補う補償反応があることをすでに発見した。またこの代謝応答パタンは個人によって異なり固有であることも発見しこれは個別医療への道を拓く可能性を持っている。一方糖尿病患者は透析後半に乳酸などの血中レベルが低下し、かつケトン体(3-ヒドロキシ酪酸)が急増すること(低乳酸・高ケトン体症)を発見した。透析液の糖濃度100-150mg/dlであるのに飢餓の代謝に陥ること、この原因にインスリンが透析後半に大きく除去されることがあると突き止めた。そこで透析中にインスリンやアミノ酸の補充療法を試み、患者の血中代謝物動態を観測したところ、補充は代謝を回復させることも明らかにした。また水溶性ビタミンであるビオチンはエネルギー代謝に関わる補酵素である。先に我々はビオチンとビオチン代謝物の蓄積が透析患者の合併症であるけいれんに大きく関係することも明らかにしている。本研究ではインタクトビオチンをその代謝物から分離してMS法で測定することに成功し、けいれんを持つ透析患者はビオチンの代謝物が血中により蓄積していることを見出した。ビオチン投与によって糖尿病患者のコレステロール値が変化することも見出し、ビオチンと糖尿病性透析患者との関連も示唆した。
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