研究課題
我々は遺伝性高血圧症の解析を通じてWNKキナーゼ-OSR1/SPAKキナーゼ-SLC12a輸送体シグナル伝達系を発見した。この系は、腎臓でのNaCl出納調節のみならず、血管平滑筋のトーヌス調節や腫瘍細胞の遊走・浸潤を制御している事も明らかとなり、よってこのWNKシグナルカスケード阻害は、降圧利尿のみならず、抗腫瘍作用をもつ可能性がある。最近、我々はこのWNKキナーゼの分解を担う分子(E3ユビキチンリガーゼ)、KLHL2/3―Cullin3複合体を明らかにした。本研究では、このKLHL2/3着目し、この分子を標的としたWNKシグナル伝達系阻害法の可能性を探索した。まず、細胞培養系において、KLHL2/3の強制発現によって、同時に発現させたWNKキナーゼの蛋白減少作用を確認することが出来た。次に、内因性のWNKシグナル系に対しての抑制効果を確認したところ、強制発現系のWNKに対する作用よりはその効果が軽度であった。おそらく、一過性のKLHL2/3の強制発現では蛋白としての半減期の比較的長いWNKキナーゼの長期間の抑制は困難と考えられ、KLHL2/3蛋白を安定発現できる細胞株を樹立し、KLHL2/3発現増強による、内因性WNKシグナル抑制の効果を確認中である。一方、KLHL2/3トランスジェニックマウス作製を並行して行っている。一方、KLHL2/3の生体内での役割の確定のため、KLHL2,KLHL3ノックアウトマウスを作成し、各臓器におけるWNKキナーゼの発現蛋白量の評価を行った。その結果、KLHL3に関しては腎臓でのWNK1,WNK4のタンパク分解に関わっている事、ヘテロのKOではWNKの蛋白量に変化を及ぼさないこと、KLHL2のKOでは腎臓髄質と肺のWNK4量に変化を認めた。今後ダブルKOの解析をすすめ、KLHL2/3発現増加によって効果の期待できる細胞・臓器を特定する。
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