研究課題
本課題は,稀少遺伝性疾患である,PAX2遺伝子変異を伴った腎コロボーマ症候群から疾患特異iPS細胞を樹立し,本症候群の病態解明,治療法開発および薬剤スクリーニングシステムを構築するものである.PAX2遺伝子変異を伴った3例の腎コロボーマ症候群症例の血球細胞からiPS細胞およびコントロールの健常日本人由来iPS細胞から中間中胚葉および尿細管などの腎系譜細胞への誘導を確立した.誘導方法を改善し再現性のある誘導を確立した.肉眼的形態,および代表的な表面マーカーを用いた解析では,3例の疾患特異iPS細胞および健常日本人由来iPS細胞の間には、明らかな誘導率の違いは確認されなかった.今回,尿細管上皮細胞へ分化した細胞の分離収集法も確立した.この方法によりPAX2を発現する尿細管上皮細胞の解析が可能となる.また,1例の疾患特異iPS細胞および健常日本人由来iPS細胞の腎系譜細胞へ誘導された経時的なサンプルから、候補遺伝子に対する経時的発現遺伝子解析を行った.健常日本人由来iPS細胞において,PAX2の遺伝子発現と呼応して発現増強し,疾患特異iPS細胞で発現増強の低減が見られる10因子を確認した.これらの因子には,腎発生や細胞分化に関与している事が報告されている因子も含まれている.また,これまで機能が解明されていない分子も含まれている.今回の検討において,病態解明や治療法開発のための基盤システムを確立すると共に,プレリミナリーな解析が可能であることを示した.また,一定レベルまでヒト尿細管上皮細胞を分化誘導する事が可能であり,薬剤評価系の基盤を確立することができた.この様に、本研究課題の目標が達成できた.今後,これら基盤システムを用いて詳細な機序解明プロジェクトを展開していく.
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Nephrol Dial Transplant.
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
10.1093/ndt/gfw417
Kidney international
Clin Exp Nephrol
巻: 20 ページ: 195-203
10.1007/s10157-015-1144-9