ユビキチン・プロテアソーム系(UPS系)は種々の細胞の恒常性維持に重要なシステムを制御しており、腎臓においてもENaCなどがUPS系で分解されることが知られています。しかしながら、これらの知見は各論にとどまっており、UPS系が総体として腎臓の恒常性をどのように維持しているかは明らかではありません。申請者らは任意の時点で任意の構成細胞でUPS系を完全に阻害することを可能にしました。本研究課題では、腎臓の恒常性維持、生理機能、内分泌機能、修復・再生におけるUPS系の役割を総体として理解するとともに、トランスポートソーム解析を含むプロテオーム解析を用いて、UPS系で制御されるタンパク質群を網羅的に同定し、その機能的連関を解明することで、これまで謎につつまれてきた腎臓におけるUPS系の機能を明らかにすることをめざしています。 具体的には、任意の時点で近位尿細管と線維芽細胞におけるUPS系を阻害することによって、腎臓の恒常性維持および障害・修復におけるUPS系の機能を解析します。解析は現在も続行中ですが、例えば近位尿細管の解析では、数日間のUPS系抑制のみで近位尿細管の障害・変成と急性腎障害を惹起することを見出しており、近位尿細管の恒常性維持におけるUPS系の重要性が想定されました。 線維芽細胞は健常腎ではEPOを、腎臓病の過程でmyofibroblastに形質転換した後は細胞外マトリックスを大量に産生し分泌する細胞ですが、それぞれのタイミングでUPS系を阻害することが同細胞の形質の維持や可塑性、タンパク産生能に与える影響を検証しています。
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