研究課題
ポドサイトは糸球体毛細血管を覆う上皮細胞で、分化すると隣接するポドサイトと足突起嵌合とスリット膜を形成して濾過ファルターとして機能する。マウスポドサイト細胞株(MPC)、ヒトポドサイト細胞株(HPC)を分化誘導する実験系を用いて、ポドサイト分化の分子機構を調べた。MPC、HPCともに、分化によりアクチン線維や微小管などの細胞骨格の再編を伴って細胞形態が偏平かつ巨大化し、隣接するポドサイトとZO1陽性の細胞間結合、細胞間嵌合を形成した。分化ポドサイトにはダイナミン1およびダイナミン2が発現し、それぞれ微小管、アクチン線維(ストレスファイバー、皮質アクチン)と共局在した。さらに、細胞骨格上に観られたダイナミンの局在は細胞骨格の脱重合により消失し、逆に、ダイナミン阻害剤の添加により微小管の安定性が低下した。これらの結果から、ポドサイトにおいてダイナミンが細胞骨格のダイナミクスを制御することが強く示唆された。次にダイナミンの変異による影響を調べた。まず、神経変性疾患シャルコー・マリー・ツース病の原因となる変異ダイナミン2(K562E)の発現が、ストレスファイバー(アクチン線維束)の形成不全とアクチン凝集をもたらすことを、ヒト骨肉腫細胞株U2OSを用いた解析により明らかにした(Yamada et al., Neuroscience letter 2016)。同様のアクチン細胞骨格の異常は、ダイナミン2K562Eを発現させたHPCにおいても観察された。、今後、ダイナミン2によるアクチン細胞骨格の制御が足突起嵌合形成に機能することを解析する予定である。
2: おおむね順調に進展している
マウスポドサイト細胞株(MPC)に加えてヒトポドサイト細胞株(HPC)でも、培養条件、分化条件を最適化し、分化ヒトポドサイト株による解析系を確立した。これにより、ダイナミンおよび関連タンパクの局在と細胞内動態をMPCとHPCの2種のポドサイトを用いて解析、比較することが可能となった。
分化MPCにダイナミン1およびダイナミン2が発現し、それぞれ微小管、アクチン線維と微小管の制御に機能することが強く示唆された。今後は、HPCでもこの現象を確認するとともに、ダイナミンと協調して働く結合タンパクの局在、動態を解析するとともに、足突起嵌合やスリット膜形成に果たす役割を明らかにする。さらに、シャルコー・マリー・ツース病(CMT)、核中心性ミオパチー(CNM)などの変性疾患をもたらすダイナミン2変異のポドサイトに対する影響をMPC、HPCを用いて解析するとともに、CMT、CNMと腎機能低下、腎機能不全との関連を文献的に調べる
予測した回数より少ない実験で成果が得られたため、次年度の実験費用にあてる。
次年度に繰越し、消耗品として使用する。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件)
Scientific Reports
巻: 6 ページ: 1,12
10.1038/srep23372
International Journal of Oncology
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