現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
AKIで最も障害をうける近位尿細管はミトコンドリアの含有量が高く、オートファジー/マイトファジーがSestrin2とBNIP3により誘導されアポトーシスを抑制し、AKIの病態に関与することを報告している(Am J Physiol 2013)。さらにTXNIPはThioredoxinと結合し酸化ストレスを調整する蛋白であるが、申請者はAKIでTXNIPが亢進し、インフラマゾームが活性化することを見いだし、TXNIP欠損マウスでのAKIの予後が悪化する実験結果も得た。TXNIPによるミトコンドリア機能調整とマイトファジーの制御は極めて興味深く、TXNIP-KOマウスを使用し、AKIでの腎機能、インフラマゾーム(ASC, IL-1b, Caspase1のWestern Blotにより評価)、ミトコンドリア機能(ATP5a, COX IV, PGC-1a, UCP2)、アポトーシス関連蛋白(TUNEL染色、JNKのリン酸化)で評価した。対象群としてwild typeマウスを使用した。wild type マウスで虚血/再還流によるAKIで24時間後をピークにTXNIPが誘導されることならびに培養尿細管細胞でTXNIP siRNAによりH2O2によるインフラマゾームの活性化は抑制され、ミトコンドリア機能低下が回復することを認めており、これらの系をさらに進める。TXNIP-KOマウスではミトコンドリアの形成不全が起こることを見いだしている。
|
今後の研究の推進方策 |
TXNIP-KOマウスではミトコンドリアの形成不全が起こるメカニズムを検討するとともに、TXNIP-KOマウスとGFP-LC3-TGマウスのdouble遺伝子改変マウスを使用し、AKIの予後の検討を行う。AKIのモデル両側腎動脈閉塞再還流(30分)あるいはシスプラチン投与(20mg/kg腹腔投与)を行う。また系時的にCreatinine,BUNを測定するとともにAKI後12-24時間後の腎機能とミトコンドリア機能(collagen type IV, a-SMA染色および蛋白定量)を評価する。同時にGFP陽性顆粒として観察されるオートファジーを共焦点顕微鏡でモニターし、double-TGマウスと(TXNIPの発現は野生型の)GFP-LC3-TGマウスの腎機能、ミトコンドリア、オートファジーを含め、急性腎障害を検討する。 また倫理委員会の許可(承認番号22-61)を得て、急性腎障害の腎生検検体でオートファジー/マイトファジー検出とその意義を検討する。既にマウス腎組織での共焦点顕微鏡および電子顕微鏡を用いたオートファジー/マイトファジー検出の系は申請者の研究室では確立されつつあり、実際のヒト急性腎障害でオートファジー/マイトファジーの系が働いているかを検討する。すでにラット尿細管細胞ではマイトファジーの電子顕微鏡での確認に成功し、技術的な問題はない。
|