研究課題/領域番号 |
15K15332
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
西中村 隆一 熊本大学, 発生医学研究所, 教授 (70291309)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 腎臓発生 / 血管発生 / 血管内皮 |
研究実績の概要 |
申請者は以前にマウスES細胞及びヒトiPS細胞から3次元の腎臓組織を試験管内で誘導することに成功した。しかし腎臓が機能するには血管と接続することが必須である。本計画では、それを目指すための基盤技術として、マウス腎臓血管系の起源と発生様式を理解し、それをin vitro及びin vivoで再構築することを目的とする。 1) 腎臓血管の起源同定と正常発生の理解 多種類の遺伝子改変マウスを使って腎臓血管の起源を探索するとともに、血管内皮が蛍光発色するVEGF受容体-GFPマウスを使って腎臓血管の形成過程を検討中である。特に後者には2光子顕微鏡が必要なことが判明し、その技術をほぼ習得した。また血管内皮を単離してマイクロアレイを行った結果、大動脈血管内皮に比べて腎臓血管内皮で増加あるいは減少する遺伝子群を明らかにした。これら正常の発生過程の情報は、ES/iPS細胞から血管内皮を誘導する際のpositive controlとして有用である。 2)腎臓血管が正常に発生する器官培養法及び移植法の開発 現時点での器官培養法ではネフロンは発生するが、血管は退縮してしまう。そこでVEGF受容体-GFP マウスの胎生11.5-12.5日の腎臓を単離し、VEGF投与、VEGFに寄与する低酸素濃度、低酸素状態を模倣する薬剤などを検討したが、生体内の血管発生を再現できる器官培養系はまだ完成していない。移植法に関しては、免疫不全マウスの腎臓被膜下や大網・精巣上体などに移植して、血管発生を今後検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
発生期の腎臓血管の可視化に時間がかかったため。染色法の改善に加え、いくつかの共焦点顕微鏡を試したが、明瞭な血管像が得られなかった。試料の厚みによることが考えられたため、2光子顕微鏡顕微鏡の使用を開始した。本学には一台だけ存在するが、古い型で操作が複雑な上、本計画に必要な対物レンズが装備されていなかった。これを別予算で購入するとともに、試料の透明化の方法も複数検討した。年度後半にはいって、ようやく安定した血管像が得られるようになった。一方、生体内の血管発生を再現できる器官培養系は未完成である。
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今後の研究の推進方策 |
1) 腎臓血管の起源同定と正常発生の理解 血管の可視化はできるようになったので、今後解析を進めていく。また糸球体血管のマイクロアレイも行って、腎臓の部位による遺伝子発現の違いも明らかにする。さらに血管の起源の違いの意義を明らかにすることによって、将来の誘導法への基盤情報としたい。 2) 腎臓血管が正常に発生する器官培養法及び移植法の開発 器官培養法が難航しているので、今後は移植法の開発・改善に力を注ぐ。正常な腎臓のみならず、後葉間葉と尿管芽を外して解離し血管を入れ込んで再凝集したものも移植し、腎臓血管を再構築する。そして蛍光ラベルした様々な分子量のデキストランをホスト血管内に投与し、それがドナーの糸球体や尿細管腔に検出されるかを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
前記のように、血管の可視化と器官培養系の確立が遅れ、その先の実験に進めなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
血管の可視化は克服したので、今後は順調に進められると考えている。また移植用の免疫不全マウスが高価なので、予算は急速に消化されると予想している。
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