申請者はマウスES細胞及びヒトiPS細胞から3次元の腎臓組織を試験管内で誘導することに成功した。しかし腎臓が機能するには血管と接続することが必須である。本計画では、それを目指すための基盤技術として、マウス腎臓血管系の起源と発生様式を理解し、それをin vitro及びin vivoで再構築することを目的とする。
1) 腎臓血管の起源同定と正常発生の理解: Whole mount免疫染色、血管内皮が蛍光発色するVEGF受容体-GFPマウス、2光子顕微鏡を使って、腎動静脈及び腎臓内血管の形成過程を発生段階を追って明らかにした。また血管内皮を単離してマイクロアレイを行った結果、大動脈血管内皮に比べて腎臓血管内皮で増加あるいは減少する遺伝子群を同定した。さらに遺伝子改変マウスを使った系譜追跡により、腎臓血管の起源が大動脈とは異なることも明らかにした。これら正常の発生過程の情報は、ES/iPS細胞から血管内皮を誘導する際のpositive controlとして有用である。
2)腎臓血管が正常に発生する移植法の開発: 現時点での器官培養法ではネフロンは発生するが、血管は退縮してしまう。様々な条件を検討したが、生体内の血管発生を再現できる器官培養系はまだ完成していない。そこでVEGF受容体-GFP マウスの胎生期腎臓を単離し、免疫不全マウスに移植したところ、ドナー由来の血管がある程度発生することを見出した。今後は正常な腎臓のみならず、再凝集した腎臓組織を移植して腎臓血管を再構築し、その機能を検定したい。
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