研究課題/領域番号 |
15K15333
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
作石 かおり 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (70722685)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 筋炎 / Tリンパ球 / CD8細胞 / TCR / 次世代シークエンサー |
研究実績の概要 |
近年、分子標的生物製剤が多発性硬化症や関節リウマチなどの自己免疫疾患で目覚ましい治療成果を挙げている一方で、特発性炎症性筋疾患ではまだ応用されるに至っていない。筋炎において細胞免疫学的な病態解明が進んでいないことが背景の一つに挙げられる。本研究では、laser microdissectionにて筋内CD8細胞を切り出して、次世代シークエンサーを用いてトランスクリプトーム解析を行うことで細胞免疫学的病態解明を進めている。特に、筋内にCD8陽性Tリンパ球(CD8細胞)主体の細胞浸潤を認めるものの、急性に進行する多発性筋炎と慢性に経過する封入体筋炎の2疾患に注目し、各々の疾患におけるCD8細胞の機能特性の検討を行っている。本研究の特色は、最新のトランスクリプトーム解析技術を用いて、従来ヒトでは困難であった臓器局所のリンパ球サブセット単位の詳細な細胞免疫学的検討を行い、炎症機転を規定する効果的な治療ターゲットを発見しようとするところにある。さらに、末梢血リンパ球と炎症局所のリンパ球とのTCRのレパトアの相違についても検討を重ね、臓器特異的に増殖しているT細胞を同定して、その免疫学的特徴を明らかにすることができると考える。臓器障害に直接関与している自己反応性のT細胞の疾患ごとの特徴を明らかにすることで、自己抗原に対する免疫寛容の破綻の持続化を促し、自己免疫性炎症の慢性化に寄与する分子を解明していくことを目標とする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
LMDを用いて筋組織から蛍光標識にてCD8陽性細胞を切り出すことは可能になったが次のステップとしてNGSを用いたTCR遺伝子解析を行うため質なRNAを得ることに難渋している。このため当初の計画を修正してIBM患者のIVIg前後でのPBMCのTCRレパトア変化に着目しT細胞機能解析を進めていたが、共通機器施設の引っ越しでFACS sorterが長期間使用困難となり研究に遅延が生じた。また、研究代表者が2016年夏に医局長、昨年秋には病棟医長兼任となり医局病棟業務が増え、研究に時間が割けない状況が続いた。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度より末梢血単核球(PBMC)よりFACSを用いてCD8陽性細胞を分離し、CD8細胞に特化したTCR遺伝子解析をNGSを用いて行うことが出来るようになっているため、今後患者検体でのCD8細胞のTCR解析を進め、疾患特異的にあるいは治療によって増減しているTCRレパトア解析を行う。合わせてsingle cellの遺伝子発現解析について基本的な検討を重ねて行く。
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次年度使用額が生じた理由 |
使用機器の施設の移転と管理業務の責任増大が重なり研究に遅延が生じ、次年度への延長を申請した。使用計画としては、引き続きNGSを用いたTCR解析と遺伝子発現解析を行うための物品試薬を主に、免疫学的解析のための試薬品購入に用いる予定である。また学会での情報収集と結果発表のための緒経費のためにも使用する。
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