近年、分子標的生物製剤が多発性硬化症や関節リウマチなどの自己免疫疾患で目覚ましい治療成果を挙げている一方で、特発性炎症性筋疾患ではまだ応用されるに至っていない。筋炎において細胞免疫学的な病態解明が進んでいないことが背景の一つに挙げられる。本研究では筋炎組織内のCD8細胞の細胞免疫学的病態解明を目指して、laser microdissectionにて筋内CD8細胞を切り出して、次世代シークエンサーを用いてトランスクリプトーム解析を行うことを試みた。特に、筋内にCD8陽性Tリンパ球(CD8細胞)主体の細胞浸潤を認める封入体筋炎に注目し、炎症局所のリンパ球のT細胞受容体のレパトア解析をおこなった。今後、臓器特異的に増殖しているT細胞を同定して、その免疫学的特徴を明らかにすることができると考える。臓器障害に直接関与している自己反応性のT細胞の疾患ごとの特徴を明らかにすることで、自己抗原に対する免疫寛容の破綻の持続化を促し、自己免疫性炎症の慢性化に寄与する分子を解明していくことを目標とする。
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