研究課題
認知症の診断は問診,身体的診察,認知機能検査,神経学的診察を基盤に,補助診断として画像検査(形態・機能)や脳脊髄液バイオマーカーの測定が活用されている。認知機能障害や神経所見は脳病変の局在に有用な情報を与えてくれるが,認知症の原因となる分子病理については十分な情報を得ることができない。分子病理を的確に把握することは,疾患修飾治療などの分子標的治療を行う際には重要なポイントとなる。本研究はバイオマーカーの中でも血液マーカーに焦点を当てた探索研究である。血液マーカーは,腰椎穿刺を要する脳脊髄液マーカーと比較して,低侵襲であり汎用性がある点で優れている。アミノ酸は生体内の代謝経路に中心的な役割を果たしており,多種類のアミノ酸を測定することにより疾患の診断に有用であることが示されている。本研究は血漿中アミノ酸プロファイルに着目してアルツハイマー型認知症の血液マーカーを探索する課題である。平成27年度は臨床的にアルツハイマー型認知症と診断した患者36人と年齢をマッチさせた対照群34人のアミノ酸解析を行い,アルツハイマー型認知症群で有意に変動する5種類のアミノ酸代謝産物を同定した。平成28年度は軽度認知障害と診断された方の中で経過観察中にアルツハイマー型認知症にコンバートした群(n=17)と非コンバート群(n=10)でアミノ酸解析を行い,軽度認知障害からアルツハイマー型認知症にコンバート予測に有用なマーカーの探索を行った。両群で有意な差が認められたマーカーについてはROC(受信者動作特性)解析を行い感度,特異度,AUC (area under curve)の算出を行った。
2: おおむね順調に進展している
研究計画に沿って疾患群と対照群のアミノ酸分析を終えた。平成28年度には軽度認知障害由来のサンプルのアミノ酸分析を終えた。
アミノ酸代謝物の測定感度の向上させ,より微量な代謝産物の測定を実施していく。
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Dementia Geriatric Cognitive Disorder EXTRA
巻: 6 ページ: 10-16
10.1159/000442585
Neuropathology
巻: 36 ページ: 365-371
10.1111/neup.12280