研究課題
アルツハイマー病等の認知症の患者数の増加に伴い侵襲性が低い簡便な診断マーカーの必要性が増加している。血液中の微量成分を測定するblood-based biomarker (BBB) は期待されている低侵襲性診断マーカーでありその開発が先端計測技術の進展とともに進んでいる。本研究では,生体内の代謝経路の中心的存在であるアミノ酸に着目し,アミノ酸を網羅的にプロファイルする技術をアルツハイマー病のBBB開発に応用する取り組みを行った。血漿試料をカラムで全処理後,high performance liquid chromatography/electrospray mass spectrometry (HPLS/ESI-MS)を用いアミノ酸及びアミノ酸代謝産物を網羅的に測定した。アルツハイマー病患者(n=36)と年齢をマッチさせた対照群(n=34)の血漿中アミノ酸プロファイルを質量分析により測定した。血漿サンプルの採取は空腹時午前中の採血とし,採血後直ちに冷却し,4時間以内に血漿遠心分離を行うプロトコルに準じた。アルツハイマー病患者で有意に変動する5種類のアミノ酸代謝産物を同定した。その中の一つのアミノ酸代謝産物は,認知機能スケールMini-Mental State Examination (MMSE) スコアと有意な相関を示した。また,軽度認知障害(mild cognitive impairment) と診断した方の中で,経過観察中に認知症にコンバートした群と非コンバート群において血漿中のアミノ酸分析を行い,コンバート予測に有用なアミノ酸代謝産物を3種類同定した。これらの結果から,血漿中アミノ酸プロファイルはアルツハイマー病の診断及びMCIから認知症へのコンバート予測に有用なBBBとなる可能性が示唆された。
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