研究課題
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、上位および下位運動ニューロンの選択的変性により進行性の筋萎縮・筋力低下をきたす運動ニューロン疾患であるが、その治療法開発が難航している背景には、治療のターゲットとすべき分子が十分同定されておらず、病勢や薬効を鋭敏に反映するバイオマーカーも未確立であることがある。本研究では、孤発性ALS患者における血清シスタチンC値をデータ収集し、血清シスタチンC値が、孤発性ALSの病勢評価及び予後予測に寄与することを検証した。EL Escorial 改訂 ALS 診断基準で、clinically probable ALSの基準を満たす孤発性ALS患者について、同意を得た上で血清シスタチンC値を含む血液検査データ及び運動機能評価指標(ALSFRS-R、Norris scale、握力、呼吸機能検査等)を前向きに収集し、シスタチンC値と運動機能や疾患進行との相関関係を横断的及び縦断的に解析した。孤発性ALS患者計22名(65.0±9.4歳、平均±SD)について横断的に解析した結果、ALSの機能評価尺度であるALSFRS-R(39.6±5.1)と血清シスタチンC値とは強い相関関係にあることが示された(r=-0.445 p=0.038)。24週後の再評価を施行できた21名について、各被験者の初回血清シスタチンC値と24週後の努力性肺活量の変化率(-16.1%±17.3)とは強い相関をみとめ、血清シスタチンC値が高いほど、その後の病期進行が速いことが示された(r=-0.442 p=0.039)。また、ALSと同じく運動ニューロン疾患である球脊髄性筋萎縮症患者計65名(54.1 ± 9.8歳)についても横断的解析を行い、孤発性ALS患者で明らかとなった血清シスタチンCとALSFRS-Rとの相関関係はみとめなかった(r = -0.059、p = 0.643)。以上の結果から、血清シスタチンC値は、孤発性ALSの病勢評価および予後予測に寄与する疾患特異的なバイオマーカーであることが示唆され、今後の臨床試験における評価指標として利用できると考えられた。
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