CAGやCTGといった塩基繰り返し配列(リピート)の異常伸長により引き起こされるリピート病では、異常伸長DNAから転写されたmRNA(筋強直性ジストロフィーなど)や、翻訳された蛋白(ハンチントン病や脊髄小脳失調症など)が毒性を示すことが知られている。これまでリピート病では、個別の異常mRNAや蛋白をターゲットとする治療研究がすすめられてきたが、いまだ十分な効果は得られていない。本研究の目的は、リピート病全般においてより高い治療効果を達成するため、異常伸長アリルからのmRNA転写を特異的に抑制する化合物を探索し、細胞・動物モデルでその効果を検証して、リピート病の病因を根源から断つ治療法を確立することにある。本年度は、ハイスループットスクリーニングにより同定され、筋強直性ジストロフィーモデル細胞やハンチントン病モデル細胞を用いた二次スクリーニングで異常伸長リピート特異的転写抑制効果が確認されたリード化合物について、40の誘導体合成し、構造活性相関による最適化をすすめた。最も効果が高く、毒性の低い化合物をリピート病モデルマウスへ投与し、異常RNA産生抑制と核内異常RNA凝集体形成の抑制効果を確認した。さらに筋強直性ジストロフィーモデルマウスへの投与では、骨格筋症状の改善効果も見られている。また、SPRやin vitro transcriptionでの検討により、これらの効果はリピートDNAがとるミスマッチヘアピン構造へ化合物が特異的に結合することによることも明らかとなった。
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