従来のグルカゴンC末抗体を用いた測定法は特異性が低い。申請者はC末抗体とN末抗体の両方を用いたグルカゴンサンドイッチELISA法を開発した。HPLCを用いた解析で、サンドイッチELISAはグルカゴンのみを検出するが、従来法はグルカゴン以外の複数のペプチドと交叉反応していることを明らかにした。糖負荷後の血中グルカゴン変動を調べると、両者の測定系で異なるパターンが認められた。従って、グルカゴンC末抗体で認識されるグルカゴン以外のペプチドが存在し、そのペプチドが糖代謝調節に関わっている可能性が示唆された。本研究ではこの新規ペプチドを同定し、その生理機能を解明することを目的としたが、グルカゴンC末抗体が認識するグルカゴン以外の新規ペプチドの同定を、マウスの血液検体からアフィニティーカラム精製と逆相液体クロマトグラフィー、並びに質量分析法を用いて試みたが、試料が少なすぎるため、分子の同定ができなかった。そこで、現在はマウスの膵臓、あるいは消化管の試料から、上記の方法で分子同定を試みているが、未だ試行錯誤の最中である。一方、別プロジェクトで行っていたグルカゴンを質量分析装置で定量的に測定する系(LC-MS/MS)が完成し、様々なヒト、及びマウスの血漿検体を用いてグルカゴンサンドイッチELISA法との比較検討を行った所、やはり検体によっては値に相関がなく、解離するものが存在した。そこで、現在は質量分析による方法とサンドイッチELISA法との比較の上で、本研究目的である新規分子の同定を開始している。
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