研究課題
褐色脂肪細胞は、高度の肥満、脂質異常症、糖尿病の患者ではほとんど活性が認められない。そこで、糖尿病の患者から褐色脂肪細胞を作出して自家移植できれば、新しい細胞治療を提供できる可能性が考えられる。少数の既知因子を遺伝子導入することで、体細胞の運命転換が可能であることをiPS細胞研究が示して以来、リプログラミング技術を用いた様々な細胞種の創出が可能になりつつある。最近、我々はヒトの褐色脂肪細胞を、線維芽細胞から直接誘導することに成功した(ダイレクト・リプログラミング)。得られた褐色脂肪細胞はUCP1の発現が高く、極めて高機能であった。さらに、この褐色脂肪細胞を糖尿病マウスに移植すると、糖尿病を抑制できる。このような高機能な褐色脂肪細胞の誘導は報告がない。しかし現状では遺伝子導入で誘導しているので、実用化にさらに近づけるためには、安全性が高い誘導法の確立が望まれる。そこで本研究では、この技術に基づき、遺伝子導入に換えて小分子化合物を用いて、機能的かつ安全な、ヒト褐色脂肪細胞を線維芽細胞から誘導する技術を開発することを目的とした。その結果、ヒト線維芽細胞に褐色脂肪細胞様のフェノタイプを誘導する化合物を見出すことに成功した。本研究の成果は、糖尿病に対する新しい再生医療をもたらす可能性がある。
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J Cell Biochem
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