研究課題
一般的な癌細胞では、ミトコンドリア機能が変容し、エネルギー代謝において解糖系が優位となる。その一方で、われわれはホルモン依存性癌においてミトコンドリア機能の重要性を見出しつつある。本研究は、ホルモン依存性癌増殖・進展におけるミトコンドリアの新たなる役割を明らかにする目的で、多様な環境でミトコンドリア関連遺伝子の解析を行い、ホルモン応答性ならびにホルモン療法耐性にかかわる代謝経路、ミトコンドリア動態を明らかにする。癌細胞とそれをマウスに導入した腫瘍モデルにおいて癌代謝動態をイメージングも活用してモニタリングし、代謝遺伝子発現および転写制御機構、メタボロームを解析して、癌の診断・治療・予防のための新規分子標的の探索をめざす。本年度は、独自に発見したミトコンドリア蛋白質COX7RPをはじめとするエストロゲン応答遺伝子に注目し、乳癌細胞および子宮内膜癌細胞での発現とその制御機構を明らかにした。乳癌細胞、子宮内膜癌細胞にCOX7RP発現ベクターと関連プラスミドを導入し、或いはsiRNAによりノックダウンして機能変化を検討し、発現制御と細胞内局在と機能を示した。特にこれら癌細胞における酸素消費量、代謝状態を指標について、通常20%酸素濃度と低酸素状態(1-3%酸素濃度)に分けて評価し、低酸素状態がホルモン依存性癌のエネルギー代謝に与える影響を明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
本年度は、ミトコンドリア蛋白質COX7RPをはじめ、治療抵抗性にかかわるホルモン応答遺伝子、マイクロRNA、非コードRNAを複数同定し、そのがん代謝における解析を進め、複数の学会発表を進めるとともに、論文発表を行っている、特に乳癌細胞と子宮内膜癌細胞での発現とその制御機構、代謝状態を明らかにして報告することができ、平成28年度に向けて順調な成果を得ることができた。
作製したミトコンドリア遺伝子導入癌細胞あるいはそれら細胞由来のマウス腫瘍形成モデル、転移モデルの癌細胞・組織について代謝動態を解析する。これらの乳癌細胞あるいは子宮内膜癌細胞に、エストロゲンおよび抗エストロゲン剤を投与し、もしくは酸素条件下で、ミトコンドリアの経時的な変化と呼吸鎖複合体の構成因子の変化をイメージングも活用して解析し、癌細胞のホルモン反応性、低酸素応答性に関わる新しいミトコンドリア機能を解析する。エネルギー代謝状態により選択した癌細胞において、エネルギー代謝の主軸となる遺伝子の発現および転写制御、代謝を解析する。注目される遺伝子や代謝経路については、遺伝子過剰発現およびsiRNAによる発現抑制実験、生化学実験を行い、機能を解析する。これらの研究成果をあわせ、ホルモン依存性癌の増殖・進展・転移の病態におけるエネルギー代謝動態、遺伝子発現の制御のメカニズムを明らかにし、ホルモン依存性癌の診断・治療・予防における役割を示す。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (13件) (うち国際共著 2件、 査読あり 13件、 オープンアクセス 5件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件、 招待講演 4件) 図書 (1件)
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