研究課題
平成28年度は、マウスEC株(MS-1細胞)において恒常的脱リン酸化FoxO1(FoxO1-ADA)の導入により遺伝子および蛋白レベルで発現上昇を確認したリポカリン2の発現誘導機構を検討した。MS-1細胞においてアデノウイルスを用いて恒常的脱アセチル化FoxO1(FoxO1-KR)を導入してもリポカリン2 mRNAの有意な発現増加が認められ、リポカリン2は2型糖尿病に伴うインスリン抵抗性(FoxO1脱リン酸化促進)と高血糖(FoxO1脱アセチル化促進)のいずれの病態においてもFoxO1依存性に発現が誘導される可能性が考えられた。リポカリン2の既知の発現誘導機構としてAkt/NF-κB系を介した機序が報告されている。MS-1細胞にFoxO1-ADAおよびFoxO1-KRを導入するとAktのリン酸化が亢進し、これらの変異体によるリポカリン2の発現誘導はNF-κB阻害剤(Bay11-7085)の前処置により有意に抑制された。このことから、FoxO1はAkt/NF-κBの活性化を介してリポカリン2の発現を誘導することが示唆された。リポカリン2はグラム陰性菌に対する鉄イオン封鎖効果による強力な静菌作用を有する分子として同定され、血管内皮機能との関連では、ラットに対するリポカリン2投与により血管組織の血管型NO産生酵素(eNOS)の機能不全(eNOSアンカップリング)、酸化ストレス産生の増加を伴い、血管機能障害が惹起されることが報告されている。リポカリン2欠損マウスにおいては大動脈のインスリンシグナルが増強することが報告されており、2型糖尿病におけるインスリン抵抗性と高血糖が、FoxO1の活性化によりAkt/NF-κBを介してリポカリン2の発現を増加させ、血管におけるインスリン抵抗性と血管機能障害を誘導する可能性が考えられた。
すべて 2017 2016 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)
J Diabetes Investigation
巻: - ページ: 印刷中
10.1111/jdi.12651
Cell Rep.
巻: 18 ページ: 2766-2779
http://dx.doi.org/10.1016/j.celrep.2017.02.039
http://www.tmd.ac.jp/grad/cme/