研究課題
真菌感染症がGVHDに及ぼす影響についてマウスモデルを用いて検討した。移植モデルとしてはMHC完全不適合のBALB/c→B6、MHC半合致であるB6→BDF1、MHC適合のC3H.Sw→B6の3種類を用いた。真菌感染モデルとしては、菌体壁成分であるalpha-Mannanを投与する標準的なモデルを用いた。alpha-Mannanを移植日に腹腔内に単回投与したところ、GVHDスコアの悪化と死亡率の増加がすべてのモデルで普遍的に観察された。その効果はalpha-Mannanの用量依存性であった。臓器別にGVHDを病理学的に検討したところ、腸、肝で有意なGVHDの増悪が認められたが、とくに肺GVHDの増悪が顕著であった。移植後の各臓器の解析において、とくに肺に顕著なドナーT細胞の浸潤がみられたため、これを分離、解析したところTh17細胞の性格を有していた。肺マクロファージにおいてはTh17分化に関連するIL-6, IL-23, CCL20などの発現亢進がみられ、これが肺に病変が集中する原因と考えられた。このような変化は同系移植ではみられず、アロ免疫応答が必須であると考えられた。またCandida albicans感染死菌投与実験を行い、肺GVHDの増悪を再確認した。一方、肺GVHDの増悪はレシピエントにDectin-2ノックアウトマウスを用いた場合、あるいはドナーにIL-17Aノックアウトマウスを用いた場合にはキャンセルされた。以上の結果から、Candida感染は壁成分であるalpha-Mannanがレシピエントのdectin-2を介し、ドナーT細胞のTh17細胞分化を促進し、肺におけるTh17環境がドナーTh17細胞の集積を促進し、肺GVHDの発症、増悪に関与する可能性が示唆された。
1: 当初の計画以上に進展している
現在までに得られた知見がBlood誌に論文として受理されたため。また申請者は米国造血細胞移植学会において申請者がシンポジウム招待講演を行った。
今までに得られた結果から、Th17免疫応答が真菌感染によるGVHD増悪のメカニズムであることが判明したため、治療介入を目指し、Th17免疫応答に深く関連する抗IL-6抗体の投与によりGVHD増悪が阻止できないかどうか検討する。MHC半合致であるB6→BDF1モデルを用い、alpha-Mannan投与後に抗マウスIL-6抗体、MR16-1を投与し、そのT細胞免疫応答、肺GVHDに対する影響を検討する。また、今までに得られた知見は、真菌の全身感染のモデルであったので、今年度は、腸内における真菌コロナイゼーションとGVHDの関連性を検討する。臨床的には、腸内Candidaコロナイゼーションが急性GVHDのリスクであるという報告があり(van der Velden: Clin Immunol. 2010)、その機序の解明が求められる。MHC半合致であるB6→BDF1モデルにおいて、同系移植、同種移植後の糞便サンプルを継時的に収集し、次世代シークエンサーを用いて糞便中のファンジオーム解析を行う。現時点までの解析ではGVHD発症マウスにおいては腸内細菌叢に顕著な菌交代現象がみられることを見出し、昨年の米国血液学会で口演発表した(Hayase, ASH 2015)。このサンプルを用い、ファンジオーム解析を行い、GVHDとの関連を検討する。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件)
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