研究課題/領域番号 |
15K15366
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
細川 健太郎 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90569584)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 間葉系幹細胞 / 造血幹細胞 |
研究実績の概要 |
これまでに本研究では、マウス骨内膜由来の骨芽細胞分画(ALCAM+sca-1- CD31-CD45-Ter119-)に造血ニッチ分子を高発現する特殊な亜集団(骨芽細胞マーカー陰性でPou5f1およびNanogを比較的高発現する)が存在し、この細胞集団でCdh2 (N-Cadherin) とItga8 (a8-integrin) が特異的に発現していることを明らかにしている。 平成27年度はまず、これらの指標のうちItga8に着目し、抗Itga8抗体を用いた染色を組合せて(Itga8+ALCAM+sca-1-CD31-CD45-Ter119-)の新規骨内膜由来間葉系幹/前駆細胞の分離法の確立を行った。(ALCAM+sca-1-CD31-CD45-Ter119-)分画のうち20.3±5.34%がItga8陽性であることを明らかにし、分離が可能となった。一方で、内骨膜周辺ではなく、従来の骨髄由来間葉系幹/前駆細胞分画(CD51+CD140a+CD31-CD45-Ter119-)におけるItga8陽性細胞の存在を検討したところ、15%程度のItga8陽性の細胞集団が存在することを見出した。 次に新規骨内膜由来間葉系幹細胞(Itga8+ALCAM+sca-1-)の骨髄組織内の局在を明らかにするため、マウス胸骨のホールマウントイメージングを行った。すると内骨膜周辺領域において(Itga8+sca1-ALCAM+)細胞の存在を確認でき、さらに(sca1+ALCAM-)細胞はItga8陰性であり、上記細胞とは異なることを見出した。また、骨髄中にも(Itga8+ ALCAM+ sca1-)細胞の存在を確認でき、FACSの結果とも合致した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は、①新規骨内膜由来間葉系幹/前駆細胞の分離法の確立、および②マウス胸骨のホールマウントイメージングによる同細胞の局在解析を行った。①と②の検討により、解析対象の新規骨内膜由来間葉系幹/前駆細胞を精度よく分離することが可能になり、機能・性質の解析を行うための基盤を固めることができたと考えられる。次年度は確立した方法を用いて解析対象を分離し、既存の間葉系幹細胞などと比較しながら性質を明らかにできると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、新規骨内膜由来間葉系幹/前駆細胞(Itga8+ALCAM+sca-1-CD31-CD45-Ter119-)におけるニッチ分子(造血幹細胞に対する接着因子、サイトカインなど)の遺伝子発現を従来の骨髄由来間葉系幹細胞分画(LepR+CD51+CD140a+CD31-CD45-Ter119-)と比較する。 一方で、ホールマウントイメージングの結果から、骨髄中においても(Itga8+sca-1-ALCAM+CD31-CD45-Ter119-)分画の存在が示唆されたことから、この分画の分離を試みる。さらに従来の骨髄由来間葉系幹/前駆細胞分画におけるItga8陽性細胞(Itga8+CD51+CD140a+CD31-CD45-Ter119-)も同様に分離し、これらについてもニッチ分子の遺伝子発現を解析する。また、これらの4分画について、①シングルセルレベルのマイクロRNA (miRNA) 発現の網羅的解析、② DNAオリゴラベル抗体を用いたProximity Extension Assay (Prossek Multiplex, Olink Bioscience) によるシングルセルレベルのタンパク発現解析を行い、遺伝子発現、遺伝子発現調節、タンパク発現の統合的なデータから、新規骨髄間葉系幹細胞のニッチ細胞としての性質の解明にアプローチする。 次に、上記4分画の多分化能(骨・軟骨・脂肪)および長期コロニー形成維持能(CFU-F)を検討し、各々の幹細胞としての性質を明らかにする。また、造血幹細胞との共培養を経て移植を行い、骨髄再構築能を指標として検討し、各分画の持つ造血支持能を比較することで、新規骨内膜由来間葉系幹/前駆細胞(Itga8+ALCAM+sca-1-CD31-CD45-Ter119-)の性質を明らかにできると考えられる。
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