本研究では、シングルセル網羅的遺伝子発現解析によってマウス骨内膜由来の骨芽細胞分画(Alcam+sca-1-CD31-CD45-Ter119-;AL+)の一部には造血ニッチ分子を高発現する亜集団が存在し、a8-integrin(Itga8)がこの細胞で特異的に発現していることを明らかにした。またItga8+AL+細胞のFACSを用いた分離法を確立した。この細胞の遺伝子発現プロファイルを既知のマウス骨髄間葉系幹細胞(BMMSCs)やAlcam-sca-1+CD31-CD45-Ter119-とシングルセルで比較したところ、どちらにも含まれない発現様式を示すことが明らかになった。 次にItga8+AL+細胞の骨組織中における局在を明らかにするため、マウス大腿骨・脛骨を骨端部と骨幹部に分離し、それぞれから得られるAL+細胞中のItga8+の割合をFACSにより比較した。するとItga8+AL+細胞は骨端部で多く検出され、骨幹部にはあまり存在しないことが明らかになった。また、骨/骨髄組織内部におけるItga8+AL+細胞の局在をイメージングによって解析したところ、骨端部の一部の内骨膜領域に存在を確認することができた。 さらにItga8+AL+細胞の分化能と増殖能をin vitro培養系にて解析した。分化能に関して、Itga8-AL+細胞は骨芽細胞、軟骨細胞の2系統への分化能を示したのに対し、Itga8+AL+細胞は骨芽細胞、軟骨細胞、脂肪細胞の3系統への分化能を示した。また増殖能に関して、Itga8+AL+細胞はBMMSCsやItga8-AL+細胞よりも高い増殖能を示すことを見出した。 従来Alcam陽性分画は骨芽細胞の集団として認識されてきたが、上記の結果からItga8を発現する間葉系幹/前駆細胞が含まれることが示唆された。
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