研究課題/領域番号 |
15K15367
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
剣持 直哉 宮崎大学, フロンティア科学実験総合センター, 教授 (00133124)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 創薬 / 低分子化合物 / ゼブラフィッシュ / 疾患モデル / 造血異常 / ダイヤモンド・ブラックファン貧血 |
研究実績の概要 |
ダイアモンド・ブラックファン貧血(DBA)は赤血球造血のみが障害される先天性の造血不全症である。タンパク質合成に働くリボソームの異常が原因と考えられているが、発症機構は明らかではなく、また有効な治療法もない。本研究では、ゼブラフィッシュを用いてDBA治療薬の創出につながる候補物質(リード化合物)の開発を目指す。本年度は、ゼブラフィッシュのDBAモデルを用いて以下の研究を実施した。 1. 化合物ライブラリーのスクリーニング:RPS19ノックダウン胚(DBAモデル)に低分子化合物を処理して、造血能の回復をヘモグロビン染色を指標に検定した。化合物ライブラリーは、東京大学創薬機構が提供する1,280種類の化合物を含むものを使用した。1つの化合物あたり3匹の胚を24時間処理し、ヘモグロビン染色の強度を顕微鏡下で判定した。その結果、181種類の化合物で造血になんらかの回復が見られた。 2. ヒット化合物の同定と絞り込み:181種類の化合物を再スクリーニングし、最終的に23種類の化合物をヒット化合物として同定した。これらの化合物からより効果の高いものを選別するために、化合物あたり20匹の胚を処理し、統計的な解析によりさらに絞り込みを行った。その結果、4種類の化合物が有望な化合物として同定された。 3. ヒット化合物の毒性試験:4種類の化合物を正常胚に処理し、5日間に渡って形態形成や行動または造血能を観察した。その結果、全く異常は認められず、これらの化合物の毒性はきわめて低いことを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
化合物ライブラリーのスクリーニングは計画通り進んでおり、絞り込んだヒット化合物の毒性試験も実施したことから、「研究はおおむね順調に進展している」と判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
1. 絞り込んだヒット化合物の効果について、十分な数(50匹以上)の胚で検証する。 2. 化合物の構造、反応性、類似化合物、文献などの既知情報をもとに作用機序を予測する。 3. 化合物処理とリボソーム活性との関連を調べるためにポリソーム解析を行い、リボソームと結合したmRNAを網羅的に解析する。これにより、化合物処理によりどのmRNAの翻訳が変動し造血能を回復させたのかを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
化合物ライブラリーが実費のみの負担で済んだため、当初見込額との間に差額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
物品費は、一般的な試薬・器具の他、ゼブラフィッシュの飼育費などに使用する。旅費は、国際人類遺伝学会および分子生物学会など関連学会への参加・発表のための経費として使用する。人件費・謝金は、研究を効率的に進めるために実験補助員等を雇用する経費として使用する。その他の経費は、論文発表するための投稿料、学会の参加料などに使用する。
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