研究課題
ダイアモンド・ブラックファン貧血(DBA)は赤血球造血のみが障害される先天性の造血不全症である。タンパク質合成に働くリボソームの異常が原因と考えられているが、発症機構は明らかではなく、また有効な治療法もない。本研究では、ゼブラフィッシュを用いてDBA治療薬の創出につながる候補物質(リード化合物)の開発を目指す。本年度は、これまでのスクリーニングで絞り込んだ化合物について効果の検証を行った。1. ヒット化合物の効果の検証:RPS19ノックダウン胚(DBAモデル)に、絞り込んだ4種類のヒット化合物を処理して、造血能の回復をヘモグロビン染色を指標に検証した。1つの化合物あたり3種類の濃度で各20匹の胚を処理して検討したところ、2種類の化合物(化合物B、化合物D)で有意な回復が見られた。そこで、化合物Bについては、他のDBAモデルでの検証も行った。2. 化合物Bの効果の検証: 種々のDBAモデルにおける化合物Bの効果を検討するために、RPS19の他、RPS15A、RPS27、RPL27のノックダウン胚を用いて同様の実験を行った。その結果、低濃度の化合物の処理において有意な改善がみられた。化合物BがDBA創薬の有望な標的と考えられた。3. その他の化合物:論文検索でヒットした化合物Eについて、RPS19、RPS15A、RPS27、RPL27のノックダウン胚を用いて同様な実験を行った。その結果、低濃度での処理において、造血能の回復が見られた。一方、高濃度ではゼブラフィッシュの発生に毒性が認められた。今後は化合物Dの検証を行うとともに、化合物Bおよび化合物Eの類似化合物の検索、構造解析などを行い最適化を目指す。
3: やや遅れている
DBAモデルを用いた化合物のスクリーニングを行いヒット化合物を絞り込み、一部の化合物について再現性を確認した。しかし、検証実験に手間取っておりin sillico解析などによる最適化は実施していない。
1. 絞り込んだ化合物の薬効について再現性を確認する。2. 絞り込んだ化合物の類似化合物を検索し薬効を検討する。3. 上記がうまく進まない場合、新たな化合物のスクリーニングについても検討する。
ヒット化合物の薬効の確認に時間が取られ計画に遅延が生じたため、次年度使用額が発生した。
物品費は、一般的な試薬・器具の他、ゼブラフィッシュの飼育費などに使用する。旅費は、国際RNA学会および分子生物学会など関連学会への参加・発表のための経費として使用する。人件費・謝金は、研究を効率的に進めるために研究員を雇用する経費として使用する。その他の経費は、学会の参加料などに使用する。
すべて 2017 2016 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 4件) 図書 (1件) 備考 (2件)
J. Hum. Genet.
巻: 62 ページ: 473-480
10.1038/jhg.2016.149
Haematologica
巻: 102 ページ: e93-e96
10.3324/haematol.2016.153932
http://ribosome.med.miyazaki-u.ac.jp/labo/
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