研究課題
平成27年度においては、IgG4関連疾患において最も多い表現型である自己免疫性膵炎モデルを用いた検討を行った。MRL/MpJマウスにTLR3 ligand であるPolyinosinic:polycytidylic acid (Poly (I;C))を全身投与する自己免疫性膵炎モデル動物を用い、自己免疫性膵炎の発症に腸内細菌がどのように関わるのか?解析した。まず、抗生剤投与による腸内細菌の除去が膵炎発症に及ぼす効果を検証した。その結果、腸内細菌の除去により、自己免疫性膵炎の発症が抑制されることが明らかになった。また、その効果は膵臓に浸潤する免疫細胞(形質細胞様樹状細胞、T細胞、B細胞)の減少を伴っていた。炎症性サイトカインの発現解析はサイトカインアレイ法により、実施した。サイトカインアレイでは、形質細胞様樹状細胞の減少に伴うI型IFN、CXCL10、CXCL11の産生低下が著明であった。また、 TNF-alpha、IFN-gamma、CCL2、IL-6の発現も著明に低下していた。以上のことから、自己免疫性膵炎の発症に腸内細菌を介する免疫反応が関与することが明らかになった。現在、マウスの自己免疫性膵炎の発症に関わる腸内細菌叢の解析を試みており、マウス便検体を用いた16S ribosomal RNAのSequenceを解析することにより、マウスの自己免疫性膵炎の発症に関わる腸内細菌の同定を目指している。
3: やや遅れている
マウスの自己免疫性膵炎の発症に腸内細菌を介する免疫反応が関与することを明らかにすることができた。しかしながら、マウスの便検体を用いた検討では、膵炎を惹起あるいは抑制する腸内細菌の同定には至らなかった。
平成28年度においては、マウスの自己免疫性膵炎及びヒトIgG4関連疾患の発症に腸内細菌叢の差異が関与していることを目指す。この目標のため、まず、16S ribosomal RNA Sequenceを用いた検討により、膵炎惹起性あるいは抑制性腸内細菌の候補の同定を行う。平成28年度においては、下記の研究課題に取り組んでいく予定である。1)マウスの自己免疫性膵炎モデル及びヒトIgG4関連疾患の発症に関与する腸内細菌叢の同定を行う。2)1)で同定した腸内細菌をB細胞と共に培養し、IgG4の産生がどのように制御されるのかを検討する。上記の検討を介して、マウスの自己免疫性膵炎及びIgG4関連疾患の発症に関わる腸内細菌叢の同定と腸内細菌叢の制御を用いた疾患の新規治療法を提案する。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件)
Mucosal Immunology
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