研究分担者 |
太田 昭一郎 佐賀大学, 医学部, 助教 (20346886)
有馬 和彦 佐賀大学, 医学部, 准教授 (60336112) [辞退]
小川 雅弘 佐賀大学, 医学部, 助教 (90599317)
南里 康弘 佐賀大学, 医学部, 研究員 (00382218)
布村 聡 佐賀大学, 医学部, 助教 (70424728)
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研究実績の概要 |
ペリオスチンは細胞外マトリックスタンパク質の一つである。我々は, ペリオスチンが喘息における肥厚した基底膜の構成成分となっていることを明らかにした。その後, ペリオスチンは2型炎症反応のバイオマーカーとなるとともに, 2型炎症反応阻害薬の効果予測に有用であることが示されている。我々も, 独自でペリオスチン検出キットを構築し, 喘息のクラスター分類, あるいは治療薬の選択において有用なバイオマーカーとなることを明らかにした。しかし, アトピー性皮膚炎, 間質性肺炎, 強皮症など数多くの炎症疾患において血中ペリオスチン濃度が上昇することから, 現在のペリオスチン検出キットには疾患特異性に問題が存在する。本研究では, 疾患特異的なペリオスチンを同定し, そのタイプに特異的な抗体を作製することを目的としている。 我々は, まず血清ペリオスチンは多量体と単量体とで存在することを明らかにし, この両者を区別することのできる抗体を探索した。その結果, SS19DとSS19Aの二つの抗ペリオスチンモノクローナル抗体が単量体ペリオスチンのみを認識することを見出した。この両者を組み合わせてELISAシステムを構築して60名の特発性肺線維症(IPF)患者を対象として解析を行った結果, (1)単量体ペリオスチンはKL-6, SP-D, LDH, 総ペリオスチン(多量体ペリオスチン+単量体ペリオスチン)に比べてIPFの診断能力が優れている, (2)単量体ペリオスチンと総ペリオスチンはKL-6, SP-D, LDHに比べて呼吸機能悪化の予後予測能力において優れている, (3)単量体ペリオスチン/総ペリオスチン比はIPFにおいて喘息, アトピー性皮膚炎, 強皮症に比べて高いことを明らかにした。以上より, 単量体ペリオスチンの測定は, IPF患者の診断・管理において有用であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
血清ペリオスチンには多量体と単量体が存在することは, 我々も含めて複数のグループによりすでに確認されていた。しかし, 単量体を特異的に認識する抗体の作製に成功したのは本研究が始めてである。しかも単量体ペリオスチンの測定が, 従来の総ペリオスチン(多量体ペリオスチン+単量体ペリオスチン)の測定に比較して, IPFの診断や, 他のペリオスチン高値を示す疾患の鑑別において有用であることを明らかにした。このことは, 単にペリオスチンタンパク質の生物学的意義の発展に留まらず, IPFの診断・管理に大きく貢献すると期待され, 大きな基礎的・臨床的意義を持つ研究成果であると言える。 ただ, 今回の成果はIPFに特異的な現象であり, 喘息, アトピー性皮膚炎, 強皮症など他のペリオスチン高値を示す疾患での特異的タイプの同定には至っておらず, 今後の課題となっている。
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今後の研究の推進方策 |
血清においてどうして多量体ペリオスチンと単量体ペリオスチンが存在し, IPF患者において単量体ペリオスチンが相対的に多量体ペリオスチンに比べて増加するのかを明らかにする。そのために, 多量体ペリオスチンの構成様式について解析を行う。具体的には, (1)ペリオスチン会合タンパク質の同定, (2)会合に関与しているジスルフィド結合の同定とその結合様式の解析を進める。さらに, 喘息, アトピー性皮膚炎, 強皮症など他のペリオスチン高値を示す疾患での特異的タイプの同定を進める。具体的には, (1)種々のペリオスチンアイソフォームに対する抗体の作製と疾患における発現の解析, (2)患者血清からのペリオスチン精製とそれによる患者特異的アイソフォームの同定により進める。
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