研究課題/領域番号 |
15K15378
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
蔵野 信 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (60621745)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | アポリポ蛋白M / スフィンゴシン1-リン酸 / 播種性血管内凝固症候群 / 多臓器不全 |
研究実績の概要 |
本邦における感染症による死亡は、優れた抗生物質が開発されてきている現在においても死因統計において未だ上位に位置している。その1つの大きな原因として、感染症に続発する播種性血管内凝固症候群(DIC)そして、多臓器不全(MOF)により、抗生物質などによる原疾患の治療が効果を発揮する前に致死的状態に陥ってしまうことが挙げられる。したがって感染症による死亡率を下げるためには、抗生物質の開発とともに、DICそれに伴うMOFに対する治療薬を開発することが求められているが、現在のところ、有望な治療薬に乏しい。 本研究では、細胞生存促進・抗アポトーシス作用があり、様々な臓器において臓器保護作用が報告されているスフィンゴシン1-リン酸を、その輸送体、分解抑制因子であるアポ蛋白M(ApoM)を用いることで、体内における総量および作用を増強し、播種性血管内凝固症候群、多臓器不全による生存率改善を試みることを目標とし、リポポリサッカライド誘導DIC・MOFマウスモデルを用いて検討をする。そして、最終的には、リコンビナントApoMの有用性についても検討し、将来の臨床応用への架け橋となる基盤を作ることを目的とする。 平成27年度には、ApoM過剰発現により、LPS誘導DIC・MOFモデルの生存率向上を再確認し、その機序として、ApoMがS1P受容体1, S1P受容体3依存的に抗アポトーシス作用を発揮することを解明した。また、ApoMを発現抑制すると、LPS誘導DIC・MOFモデルの生存率を悪化させ、アポトーシスマーカーを増加させていたことを発見した。また、平成28年度に使用する予定であるApoMリコンビナントの精製を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は、(1)アポリポ蛋白M(ApoM)過剰発現によるLPS誘導DIC・MOFモデルの生存率向上のメカニズムの検討、(2)ApoM発現抑制によるLPS誘導DIC・MOFモデルの生存率、臓器障害に与える影響の検討、(3)ApoM recombinantの作成を予定していたが、(1)については、ApoM過剰発現による生存率向上のメカニズムはスフィンゴシン1-リン酸(S1P)受容体1, 3による抗アポトーシス効果、細胞生存促進効果が大きいことが分かり、(2)については、ApoM発現抑制により、生存率が低下しており、(3)についてはApoMリコンビナントの作成が終了している。よって、当初の予定通りに研究が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、ApoMリコンビナントのin vitroおよびin vivoにおける機能評価、およびApoMリコンビナントのLPS誘導DIC・MOFモデルに対する有用性の検討を行う。ApoMリコンビナントの有用性が見られたら、in vitroの研究にてその機序について検討を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定の研究は遂行することができたが、予定数以下のマウスにて生存率に有意差がついたこと、S1P受容体アンタゴニストをまとめて購入することにより費用を節約できたため。
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次年度使用額の使用計画 |
費用的に余裕があれば、平成28年度のin vitroにおけるApoMリコンビナントの作用の検討は、よりヒトに近いモデルで行うため、初代培養細胞やiPS細胞を分化させて作成した細胞などを用いることを検討する。
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備考 |
研究内容および研究業績を掲載している。
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