最終年度は、糸球体腎炎患者の血漿収集および溶連菌特異的なモノクローナル抗体の作成を重点的に施行した。患者血漿に関しては臨床医の協力のもと、東京医科歯科大学疾患バイオリソース・センター(バイオバンク)を利用し、現在も収集を続けており、現在までに40例程度が使用可能な状態となっている。溶連菌特異的なモノクローナル抗体の作成に関しては、これまでに得られた抗体に関してはその全てが菌体内タンパクに対するものであった。現在、免疫原に用いる抗原に関して、タンパクを除去するなどの工夫をし、作成を続けており、良好な結果が得られつつある。また、前年度に作成した溶連菌に対するポリクローナル抗体を用いた免疫組織学的解析を計画しており、予備検討で行った結果では糸球体に細菌様の陽性像を確認している。しかしながらポリクローナル抗体であるため高いバックグラウンドにより正確な判断が困難であることや、モノクローナル抗体と比較して抗体の特異性に関する問題があるため、有用なモノクローナル抗体の作成に成功した際には、ポリクローナル抗体にて陽性を認めた症例に関して詳細な解析をする必要があると考えられる。本研究はこれまで行ってきたサルコイドーシス研究から着想を得ている。検出系の作成が可能となれば本法のモデル疾患として対象としている糸球体腎炎だけでなく免疫複合体が関与する疾患や細菌感染症において、コア抗原となっている分子の検出や疾患メカニズムの解析において応用可能な方法であるため、今後も継続して挑戦することが重要であると考えられる。
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