研究課題
我々が見出したプリオン蛋白質による抗インフルエンザウイルス活性のメカニズムを明らかにするために、インフルエンザウイルス感染におけるプリオン蛋白質の抗酸化ストレス活性について調べた。その結果、インフルエンザウイルスが感染したプリオン蛋白質欠損マウスの肺内では、コントロールの正常マウスの感染肺と比べて、活性酸素種が過剰に産生されており、インフルエンザウイルスが感染したプリオン蛋白質欠損マウスの肺内では酸化ストレスが高いことが示された。また、抗酸化剤をプリオン蛋白質欠損マウスに投与しインフルエンザウイルスを感染させると、著明にその生存率が改善されることが分かった。以上の結果は、プリオン蛋白質がインフルエンザウイルスによる酸化ストレスを抑制し、インフルエンザウイルス感染による肺損傷を防御していることを示した。また、N末のオクタペプチド領域を欠損するプリオン蛋白質は、インフルエンザウイルス感染によるマウスの死亡率を改善しないことから、このオクタペプチド領域がプリオン蛋白質の抗インフルエンザウイルス活性に重要な領域であることが分かった。また、抗インフルエンザウイルス活性を示す抗プリオン蛋白質抗体のエピトープを解析すると、N末領域のアミノ酸41-45であることが分かった。他の2つの抗体のエピトープは既に明らかにされており、C末領域であった。これらの結果は、抗体はプリオン蛋白質のN末及びC末に結合することで、抗インフルエンザウイルス活性を発揮することが分かった。また、アミノ酸41-45に結合する抗体を投与すると、蛋白質キナーゼ活性が上昇することが分かった。従って、抗プリオン蛋白質抗体による抗インフルエンザウイルス活性はこの蛋白質キナーゼの活性化に夜可能性が考えられた。
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Archives of Virology
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10.1007/s00705-017-3295-3
Journal of Virology
10.1128/JVI.01862-16.